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いまだ多くの職人さんが残るものづくりの町、台東区南部・徒蔵エリアを舞台に、まち歩きをしながら、ものづくりの魅力に触れられるイベント「モノマチ」が、10月17日(金)から19日(日)までの3日間開催されました。

「モノマチ」では全国のクリエイターによる物販ブース、普段は開放していない工房見学や、数多くのワークショップが開かれます。2011年に始まり、第6回目を迎える今秋は、職人、クリエイター、企業など200組以上が参加しました。18日(土)に行ってきたので、その時の様子をレポートします。

 

モノマチ散策スタート!さて、どこから回ろう?

イベント会場は御徒町から浅草橋にかけて、2km四方の地域全体と広範囲。JR御徒町駅に降り立つも、どこから回ろうか迷ってしまいましたが、まずは高架下に工房と一体型のショップが並ぶ「2k540」を目指すことに。御徒町駅から5分ほど歩くと到着。

常設店以外にも、各地から集まったクリエイターによる物販、「クリエイターズマーケット」が行われています。ぶらぶらとお店を見ていると、人だかりを発見!そこではオリジナルTシャツがプリントできるワークショップが開かれていました。

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「どんな風にして出来上がるんだろう…」みなさん興味津々で見ています。他にもオリジナルバッグ作りや真珠の取り出し体験など、普段なかなか体験できないワークショップには、どこも人が集まっていました。私も午後にワークショップの予定を控えていたので、ワクワクする気持ちが募っていきます。
その前にまずは腹ごしらえ!と、インフォメーションセンターにいるスタッフさんに道を教えてもらい、徒歩10分ほどで「おかず横町」へ。

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おかず横町が一番栄えていた頃は、すりに気をつけなければいけないほど、人であふれていた商店街だったそうです。モノマチ限定で店先にお弁当や、お惣菜を出している商店があり、オムライス、肉巻き、クレープなどの移動販売店も集結。所々にテーブルと椅子が置かれ、ゆっくりと食べられるようになっています。「美味しいものならおかず横町!」と元気よく声をあげる店主につられ、魚米(うおよね)商店で海鮮丼を注文。さすがお魚屋さん、ネタが新鮮でとても美味しくいただきました!

04800円でお味噌汁付きとお得でした

 

モノマチでしか体験できない、ノート作りのワークショップに参加

腹ごしらえが出来たところで、来る前から楽しみにしていたお目当てのワークショップ「目の前で仕上がる、名入れオーダーノート」に参加するため、文房具屋「カキモリ」に向かいます。

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カキモリでノートを作った後、大栄活字社で活字を買い、最後に田中箔押所で名入れをしてもらうという3社のコラボで行うワークショップは大盛況。店内はたくさんの人で溢れていました。

私も受付を済ませてさっそくノート作りを開始!まずはサイズ、表紙、裏表紙、中紙を選びます。

表紙は無地、柄、革、フェルトなど、デザインも素材も何種類もあり、選ぶのがとても楽しいです。
中紙も罫線、無地、マス目など様々な用途に合わせて選ぶことができます。

 

06使うシーンを想像しながら、思い思いに選んでいる様子

紙が選べたらリングの色、留め具の種類を選びます。

07留め具の部材は全て蔵前周辺の問屋さんで揃え、加工も近くの職人さんにお願いしているそうです。

私は銅のリング、封かん留めをチョイス。全て選び終えたら、店員さんに目の前で製本してもらいます。「イメージ通りに出来上がるかな?」段々とノートが仕上がっていく様子を見てドキドキ…。

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オリジナルノートはモノマチ期間中でなくても、カキモリさんに行けばいつでも作ることができますが、名入れをするのには通常2週間ほどかかるそう。どんな人が、どのようにして名入れをしてくれているのか、その工程を見られるのはモノマチならではの貴重な体験です。

ノートが出来たら10分ほど歩いて、大栄活字社へ。出迎えてくれたのはとても優しいご夫婦。名入れしたい文字を伝えると、お二人で手分けして膨大な文字の中から探し始めます。

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「こんなに多くの文字から見つけ出すの大変ですね」と声をかけると、「ずっとやっていくうちに場所を覚えてくるのよ」と奥さん。あっという間に文字が揃いました。昔は文字が多い新聞でさえ、活字社が部分ごとに手分けをして、一字一字活字を拾い、印刷していたというからビックリです。

活字見本を見せていただきましたが、活版印刷ならではの濃淡、くっきりとした質感がなんとも美しいと感じました。

010右下にあるのが購入した活字

ノートと、活字が揃ったところで、最後は大栄活字社から歩いて3分ほどのところにある田中箔押所で箔押しをしてもらいます。

011めったにお目にかかれない工房内。箔押し体験もしていました

奥に進んでいくと、職人さんがいらっしゃいました。いよいよ最終工程。機械に活字をセットします。金箔を敷き、熱と圧力を加えることによって印字しますが、少しでもタイミングがずれると失敗してしまうそうで、一瞬に神経を研ぎすませます。

 

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「写真撮ってもいいですからね」と自ら声をかけてくれたサービス精神旺盛な田中さんは、二代目、職人歴65年の大ベテラン。「手仕事なのでまだまだ続けられます」とニッコリ。職人さんの技を間近で見られるチャンスはなかなかないので、食い入るように見てしまいました。

そして完成したオリジナルノートがこちらです!

013トータルで3000円ほどでできました!

手仕事のぬくもりが感じられ、豊かな気持ちで書き留められそうです。こうして3社にわたり、ものが完成していく過程を見ていると、自分の身の回りのあらゆるものも、多くの方の協力があってできているのだということを実感します。ワークショップで出会ったのは、とても穏やかで気さくな方ばかり。人を通してまちが身近になる、良いきっかけとなりました。

 

大満足の1日を終えて

職人さんたちの工房を歩いて回る「職人見学ツアー」も参加したかったのですが、時間の関係上オーダーノートのワークショップだけで我慢。「見たいところがありすぎて見きれないよ~!」とモノマチのパンフレットを見ながら、つぶやく人に出会いましたがすごく同感です。数多くのショップ、工房の開放、ワークショップがあるので、1日ではなかなか回りきれません。だからこそ、次回のモノマチが待ち遠しくなります。

普段はスマホで簡単にルート検索をして、行きたいところへ直行するのが当たり前でしたが、モノマチマップを片手に、時には道に迷いながら、散歩をするように歩くのはなかなか楽しいものでした。私は歩いて回りましたが、30分単位で無料で借りられるレンタサイクルもあるので、体力に自信がない人でも気軽に参加できます。

クリエイターズマーケットで珍しいアイテムを手に入れるもよし。各ワークショップに参加して、1点ものを作るもよし。それぞれの興味に合わせて自由に楽しめるモノマチ。次回開催された際はぜひ自分の手足を動かして、ものづくりの味わいを体感してみてはいかがでしょうか。

 

文 / 石川円香
東京都在住のフリーライター。関心があるテーマは日本文化、伝統工芸、暮らし、健康。
人の想いがにじみ出る記事を心がけて執筆に励む。