暮らしを形づくる基本的な要素「衣食住」の中から「食」についてのお話です。自分や家族のことを考えたら、少しでも美味しいものを、身体にやさしいもの食べたいですよね。

今回みなさんと一緒にちゃんと知りたいのは「野菜」。毎日口にしている「野菜」ですが、“有機野菜” “農薬” など知っているようで、ちゃんと知らないことが多いです。

そんな時は、実際野菜を扱っている人に聞いてしまおう!ということで、京都を拠点に「農薬や化学肥料に頼らない、環境負荷の小さい農業を営む人を増やす」取り組みをしている野菜提案企業 「株式会社 坂ノ途中」にお話を伺いしました。

取材中に、「食べる人にいちばん伝えたいことはなんですか?」とお聞きしてみました。「野菜も生き物だということです!」というのがそのお返事。なぜ、それが大切なことなのでしょうか。

 直営店舗の坂ノ途中soilキョードーにてお話を聞きました

直営店舗の坂ノ途中soilキョードーにてお話を聞きました

スーパーでは出会えないような珍しい野菜を定期宅配してくれる野菜提案企業「坂ノ途中」が、たくさんある定期宅配サービスの中でとても特徴的なところ、それは”新規就農者がつくった”環境負荷の小さい野菜”を届けてくれることです。

仕事として農業をやりたい!という人が、実は多い今の日本。既存の農家さんに比べて、有機農法などの環境負荷の小さい農業にチャレンジしたい人が多いのも特徴なんだそうです。ただ、すでに代々農業をやっている農家さんに比べると、土地を持っていない・農機具を買わなければいけない、など、始めるハードルが高いのも事実です。

「人間はこれまで、現在現役の農地よりもずっと広い面積の農地を耕作不可能にしてきました。過放牧、過灌漑、農薬や化学肥料への過度な依存などが原因です。私たちは、今後も使えるはずだった資源をダメにし、将来そこであげられるはずだった収穫を奪ってしまうことを”未来からの前借り”と呼んでいます。前借りをやめて、100年先まで続く農業をしたい。そう考えると、有機農法などの環境負荷の小さい農業をしている新規就農者さんたちは、とても魅力的でした」

自分たちが口にする食べ物が自分の健康だけでなく、”未来から前借り”にも関係しているとしたら、これはきっと知っておいたほうが良いことなのだと思います。

お話を聞かせてくれた広報の倉田さん

お話を聞かせてくれた広報の倉田さん

「せっかく土地を借りられても、日当たりや水はけが悪い・獣害が多いなどのデメリットがあることも多いんです。小さい規模で始めざるを得ない新規就農者さんは、生産も小規模で不安定になりがちです。でも、どうしてもやりたい!と農業を始めた人たちだから、すごく勉強熱心だし、すごく働く。その結果、できる野菜はとってもおいしいんです。だったら、少量不安定さは売る側の工夫でなんとかしよう、と」

1軒なら不安定な生産状況でも、150軒の農家さんをネットワーク化して仕入れを行えば、消費者へ安定した供給をすることができます。これが「坂ノ途中」の取り組みです。

「季節が変われば、同じ野菜でも味わいが変わります。夏のはじめのナスはみずみずしくやわらかいけれど、秋が近づき涼しくなると、育つのに時間がかかっているぶん、しっかりした味わいになるんです。いくら丁寧に育てていても、雨が長く続けば、トマトはちょっと水っぽくなり、おいしさは半減してしまいます。野菜が生き物だと感じるのは、こういうときですね。畑の事情を知っているからこそ、わかってくることもあります」

「野菜も生き物」「畑を知れば野菜のこともわかる」「未来からの前借りをやめよう」「100年先も続く農業を」。気になるキーワードがたくさん出てきました。

やまのあいだファーム

やまのあいだファーム

次回は、「坂ノ途中」の考え方が凝縮された自社農場、「やまのあいだファーム」についてご紹介します。