自分の手でつくることを仕事にする人が、増えますように。
こんにちは、てならい堂店主の中村です。日本全国にある焼き物産地。実は少しずつ特徴が違います。
今回募集するのは、美濃焼の地、瑞浪(みずなみ)で白磁の器づくりに取り組む「深山(みやま)」さんで製造と販売、それぞれの管理者を目指す二つのポジションです。
深山さんが器の白さと硬さを追求する中で培った、消費的でない長く使えるモノづくり。
モノづくりに関わる人たちの想いを汲んで、一緒に世界観を作れる方のご応募を、お待ちしています。

日本最大の焼き物産地、美濃
岐阜県東部。東濃と呼ばれる、多治見、土岐、瑞浪にまたがる地域で作られる焼き物は、美濃焼と呼ばれています。
日本各地に焼き物産地がある中で、美濃焼のシェアは60%もあるそう。
それだけ大きな産地なので、地区ごと会社ごとに特徴が違いますし、また多治見に窯業(ようぎょう)の学校もあることから、個人の作家さんもたくさん焼き物に取り組んでいます。
今回、シゴトを募集する深山さんは、瑞浪地区の製陶メーカー。瑞浪の駅までは名古屋から中央線で50分ほどです。
途中愛知から東濃地区に入る時に、山を一つ越えてゆくのですが、そこで急に景色が変わる、その辺りの景色がとても美しいんですよね。美濃を訪れるときは、いつも車窓に釘付けになってしまいます。
瑞浪地区は、洋食器づくりが盛んだった地域。かつて海外ハイブランドのOEMによって白い器をつくって、欧米などに輸出してきた工場が多いんですね。
ちなみにOEMは、相手先のブランド名で販売する商品の、モノづくりを請け負うことを指します。〇〇という海外の有名ブランドの名前で売られる商品を、実は日本のXXという中小企業が作っています、ということですね。

洋食器から始まった白磁のうつわ
今回は、深山さんのモノづくりのお話を専務の柴田さんに聞きました。
ハイブランドの要求品質はとても高かったそうで、その内容は白いことと硬いこと。これを満たせるモノづくりを必死にこの地域の人たちが追求してきました。
白く硬くということは、焼き物の視点で言えば、しっかりとガラス化させるということ。深山さんでは、元々白磁成分が多めの粘土を、より高い温度で焼くので、より白く、より強く、汚れづらい器を作っています。
美濃焼の窯元には、創業100年を越える会社が少なくない中、深山さんは比較的新しい方で、その歴史は50年ほど。
後発であるため、他のメーカーが既に取り組んでいる、みんなが作っている丸いお皿とは違ったモノづくりを強みにする必要がありました。
そんな深山さんの一つの特徴が「鋳込み成形(いこみせいけい)」。鋳込み成形は粘土に水分を混ぜて、型に流し込んでつくる、焼き物の成形方法の一つです。
使われる型は石膏でできているのですが、石膏は水を吸収しやすい性質を持っていますから、石膏型が徐々に水を吸収し、余分な水分を捨てればあとは器の形になった粘土が残るんですね。考えた人すごい!

美濃焼では珍しい一貫生産の工場
丸い形のお皿であれば、機械ろくろでどんどん作っていけますが、例えば楕円のお皿になると鋳込みでしか作れません。
さらにポットなどの中が空洞になっている立体的な器は、もうちょっと複雑です。空洞の型に一つ一つ泥状の粘土を流し込んで固定して、乾き具合を見ながら、器として必要な厚みができたタイミングで型をひっくり返して、余分な水分を捨てます。
これは排泥(はいでい)鋳込みと呼ばれる手法でとても手間がかかりますし、タイミングを間違えれば器が厚すぎたり薄すぎたりで、やり直しとなってしまいます。
このため、排泥鋳込みは多くの会社さんがやめてしまって他所へ外注しているそうですが、深山さんではこの成形を続けています。
そもそも美濃焼は生産量が多いため、産地の中で分業制が取られていますが、その中で深山さんは一貫生産をしている珍しい会社。
それゆえ、お客さんに提案できる幅が広いことも一つの特徴になっています。

長く使い続けて欲しいうつわ
深山さんのモノづくりは、OEM向けの器と自社ブランドの器のふた通り。自社ブランド“miyama.”のお客さんは、食器好きな30代〜40代の女性が多いそうです。
自分で料理して、盛り付けて、インスタにもあげて。道具として、しっかり使うために買う人たち。クラフトフェアに行ったりと、くらしに興味やこだわりがあるので、なんでもいいという人たちではない。
そういう人たちに向けて、miyama.の器を通して、モノを大事に、ていねいな暮らしをして欲しい、時間だから食べるとかではなく、好きな器を使ってくらしを楽しんでほしいというのが、深山のものづくりの願い。
白磁にこだわるmiyama.の器の特徴ははよごれないし、壊れづらいから、ずっと使い続けられるということを、実際にお客さんも実感して、「長く愛用してるんですよ」と声をかけてもらうことも多いとか。
作る側の人間としてこんなに嬉しいことはないだろうな、と思いますね。

製造と販売。募集する2つのポジション
今回募集するのは、製造と販売それぞれの管理者候補です。もちろん最初からということではなく、そこを目指して何年か働いてもらって、たどり着いてほしいという募集です。
製造部門は現在パートさん含めて50名弱。工場は車ですぐの距離に、2箇所あります。働いている人の年齢は20代〜60代まで幅広く、平均を取れば大体その真ん中40代前半になります。
器づくりに関わりたい人は多く、募集をかけると日本全国から応募があるとか。
入社するとまずは研修から。工程に沿ってそれぞれのポジションを2週間くらいずつ作業してもらいます。
その後は担当する工程に配属。ベテランも多い職場でつきっきりで教えるという感じではありませんが、聞けばちゃんと教えてくれる人たち。
土地特有の言葉の荒さはあるみたいですが 笑、ここはチームでものづくりをする会社ですから、分からないことは分からないと言う、教えて欲しいときは教えて欲しいと言う、そういうコミュニケーションは必要ですね。

深山のモノづくりを引き上げるシゴト
深山さんがこれから力を入れていきたいのが生産管理と品質管理。今はそこを柴田さん含めて複数人で見ているそうですが、ゆくゆくはそこを専任で見てもらうポジションについて欲しいそう。
これまで若い人は5年くらいで独立する人も少なくなかったそうですが、今回募集するのは、もう少し腰を据えて働いてもらうポジション。
だから、この人!という人が見つかるまで、慌てずじっくりと募集を続けるそうです。
仕事としては、生産や工程を調整して、不良品が出やすい箇所を改善したり、お客さんの納期通りにきちんと納められるよう管理したりといったこと。
お題をクリアしていく達成感を分かりやすく得られる仕事ではないでしょうか。
ただそのためにはモノづくりをちゃんと分かっている必要があります。早い人なら3年くらいで工場全体のことが分かるようになるとのこと。
ものづくり全体のことを分かるようになったとき、仕事の面白さも格段に広がるでしょうね。

人を知らないとモノづくりはできない
けれどもう一つ、大事なことがあるそうです。「きちんとモノづくりをするためには、人のことを知っていないとできない」と柴田さんは言います。
深山さんはこの界隈では、どちらかと言うと小規模のほう。ゆえに機械化の進む大きめの工場と比べれば、人の手がだいぶ入っているほうです。
それゆえ、その手仕事の現場で働いているひとりひとりをちゃんと分かって、ちゃんと関わることが大切になります。
仕事しては「調整ごと」も多いので、柔軟な人の方が向いていると思います。そして何よりコミュニケーションを取るのが好きな人。
これから会社に入るなら、今いる人たちは全員先輩。その先輩たちの意見を聞きながら、彼らの持ち味を活かすやり方が理想。
それにしても。手を使って仕事をして、そこにいる人と関わりを持ち続ける。とても温かみのある仕事だと思いませんか。

焼き物への想いを提案するシゴト
一方の販売部門については、深山さんでは製造と販売で会社を分けていて、販売はミヤマプランニングという会社で行います。
こちらには現在11名いて、展示会に出たり卸し先やOEM先とのやりとり、普段は倉庫併設のオフィスにいて、受注や出荷の対応などの業務があります。女性の多い職場です。
元々がOEMを中心とした会社でしたから、自分達のモノづくりを伝えて、クライアントと仕事をつくることは得意です。
ですので、やってもらいたいことは、オリジナルブランドmiyama.の「道具としての魅力」を伝える方の仕事。
「道具」という言葉が出ましたが、これも実は深山さんのこだわりです。焼き物じゃなくて、生活で使われる道具を作る。それも消費的な道具ではなくて、日々、長く使ってもらえる道具をつくる、これはそもそも社長の想いなんだそう。
成形技術を活かした完成度の高い食器、長く使える道具をつくる技術が深山さんにはあります。
あとは、そのものづくりの強みを理解し、作っている人たちの想いも代弁しながら、「なんとなく世の中で売れてるから」ではなくて、お客さんの希望と調和させていく、そんな役割を担える人が求められています。
「とにかく売ります!」の販売力ではなくて、提案力。それは焼き物への想い、道具への想いが問われる仕事になりそうです。

ベンチャー的な自由度と裁量
よその物真似のモノづくりは志向しないと書きましたが、一方でかわいいものとかシンプルなモノといった制約はなく、一貫生産の強みである提案の幅を活かしていく自由度の高い仕事です。
ところでこの自由さは、生産の幅に関することだけではなくて、柴田さんによると、どうやら仕事の仕方全般に自由というか、ベンチャー企業的な感じがあるそうです。
今回募集する生産管理や、自社ブランドの販売を広げていく仕事も、専任の前任者がいない仕事。だから決まったやり方はまだありません。
なので、どんどん自分で新しいやり方を考えて、相談して提案して、試行錯誤していく必要があります。そして深山さんの社長さんはそういうことを受け入れる度量がある人だそう。
柴田さん自身も、自ら提案してドイツの展示会に出展したことがあるそうですが、そういう自分で考えて動いてみたい人には向いている環境のようです。

チームで働くということ
一方でNGなのは、独断専行で進めてしまうやり方。自由とは言ってもチームでやってますから、周囲に一言言ってから始めることは大事。
みんな口に出さなくとも想いを持って働いている人たちばかりなので、そういう人たちの想いを汲まずに、例えば自分の前職での経験を押し付けるようなやり方で、過去に失敗した人もいるそうです。
そうではなくて、周りを尊重しながら、柴田さんの言葉を借りれば、「先にGiveをすれば後から返ってくる」ようなやり方ができる人がいいとのこと。聞いていて、どの業界でもそうだよなと思いました。
そういう人にどんどんむしろ変えていって欲しい、とのことでした。

お給料と瑞浪でのくらし
さて、長く働いてもらいたいということですが、お給料はどうなるのでしょうか。
深山さんでは(ミヤマプランニングも)基本的には、業績を見ながら社長が判断して、一律の定期昇給でじりじりと上がっていくやり方。管理職になるときには、手当でぼんっと上がるそうです。
個別の事情は直接相談できる距離感だったり、良くも悪くも昔ながらと感じますが、その分、安心して働ける環境とも言えると思います。
近くで見ている柴田さんとしては、「社長は出せるなら出したいという考えのようだけど、大きな会社ではないから、もちろんお財布の限界はある。ただ個々のことをしっかりと考えてくれていると思う」と話してくれました。
賞与は年2回。管理職以外では残業はほぼないそうです。
住環境はとても住みやすく、大きな街ではありませんが、驚くほどの田舎ではなく必要な店は全てあります。一人暮らしなら1LDKが家賃5万円前後。
土地柄、車がないとあまり満喫できなさそうですが、ミヤマプランニングの方は駅に近く、電車と自転車でも通えるそうです。
推しのポイントはありますか?と聞くと、「空がきれい、自然がきれい」とのこと。それは、そうですよね!

自分の世界の広がりと、深山が目指す世界
最後に柴田さんにこの仕事で得られるものを聞いてみました。
あげてくれたのが「ネットワークの広がり」。
「繋がりの中でいろんなことに関われることでしょうか。例えば京都のお茶屋さんが来たり、今日もこれからスイスからデザイナーが来たりと、いろんな世界を知ることができる。
OEMの開発だって、今こんなことが世の中では考えられてるのかと、世のトレンドを先に見れる面白さみたいなものもあります。」
製造部門にいても、やっぱり焼き物が集積し研究所もあるような産地だから、情報が溢れてる。横の広がりはすぐにできるし、探求すればいろんな可能性をつくれる、そんな環境だそうです。
想いのある人なら、自分の世界を広げ、自分で考えてどんどん変えていける環境。
そういう環境を作っている社長のことを、三国志好きの柴田さんは「ちょっとおおげさになっちゃうけど」と前置きしながら「劉備玄徳」のような人と喩えました。
劉備はその徳の高さ、器の大きさで知られる人。であるなら、それを支える柴田さんは天才軍師と呼ばれた孔明でしょうか。え?超飛の方?
やっぱりちょっと大袈裟と怒られそうな気もしますが、けれど彼らに目指してる世界観があるのは事実だと思います。
消費的ではないモノづくりを通して、お客さんの生活の中に実現されるその世界。そこを担う一員となってみたい方のご応募をお待ちしています。

募集要項
■職種
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生産担当(実作業及び管理業務)
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販売担当(実作業および管理業務)
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■職種詳細 |
★深山のものづくりを受け継ぎ、将来的に製造の中枢となる方を求めます。 ①『生産実務』成形から焼成までの一連の製造工程を、その適正や習熟度に合わせて担当頂き、生産実務を行う はじめは先輩スタッフの指導のもと仕事を身に付けて頂きます。ものづくりもそうですが最初からスピードだけを求めると、本質が疎かになります。じっくりしっかりと身に付けるつもりでご応募ください。
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★生産を行う深山のものづくりを理解し、将来的に販売の中枢となる方を求めます。 ①『販売実務』展示会や日常業務で製品紹介や顧客対応を行う。 はじめは先輩スタッフの指導のもと仕事を身に付けて頂きます。 ものづくりもそうですが最初からスピードだけを求めると、本質が疎かになります。じっくりしっかりと身に付けるつもりでご応募ください。
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■具体的な業務内容 |
①生産実務 ②生産管理
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■既存顧客 ①販売実務 ②販売管理業務
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■勤務先
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株式会社深山(瑞浪市稲津町)
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株式会社ミヤマプランニング
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■勤務地
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岐阜県瑞浪市稲津町
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岐阜県瑞浪市上平4-71
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■雇用形態 |
正社員
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■給与 |
●賃金:(基本給)175,000円~280,000円
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■勤務時間 | ●勤務日:月曜~金曜 年間休日114日 *当社年間休日カレンダーによります。 ●勤務時間:8:00~17:00(実働8時間) *休憩時間:10:00-10:10、12:00-12:40、14:30-14:40 計1時間 |
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■応募資格 |
●実務経験のある方を優遇しますが、やきものや器や食に興味があり、ものづくりに熱心な方を募集します! ◎U・Iターン歓迎!
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■募集プロセス |
①下記フォームよりエントリーしてください *応募を検討している方を対象に、半日程度の工房見学が可能です。応募前に行いたい方も、下記フォームよりご連絡ください。
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