自分の手でつくることを仕事にする人が、増えますように。
こんにちは、てならい堂店主の中村です。宮大工って聞いて、かっこいいなと思うのなんででしょうね。
今回募集するのは、岐阜で130年続く宮大工の会社、唐箕屋本店(とうみやほんてん)さんでのお仕事。宮大工は神社仏閣に関わる特別な大工。
「うちに入るからにはいっぱしの職人に育ててあげたい」小保田社長はそう言います。
宮大工を長く続けていきたい人、宮大工に関わりたい人のご応募をお待ちしています。

神様仏様につながるレアな仕事
メディアなどでも見かけるためか、宮大工と聞くと古い由緒あるお寺や神社の補修のイメージが思い浮かびますが、新しい寺社仏閣の建築、企業の敷地内にあるお社(やしろ)、鳥居、御神輿、家庭にある神棚までその仕事の幅は案外に広いです。
一般の大工や建築の業界と同じく、宮大工にも大手があり、中小の会社があり、個人でやっている職人がいて、それぞれの会社で得意分野は違うようです。
今回ご紹介する岐阜市の「唐箕屋本店」さんは、現在社長も含めて職人は3名と小さな会社。だけども創業は古く、明治28年。2025年は創業130周年にあたる年です。
宮大工は寺社の集中する京都奈良に近い畿内に多いのですが、一方で格式高い寺社に使われる木曽檜の森のお膝元でもある岐阜もまた、産地に近く意味性の強い土地だと感じます。
当初は農機具である「唐箕」を作っていたので「唐箕屋」。その後宮大工の領域に進出し、現在は神社、御堂の建築、神棚、御神輿などの製造、販売を行なっています。
唐箕屋本店の小保田社長にこの仕事の特徴を聞くと、返ってきた答えは「レア」であること。神様や仏様に祈りを捧げるための仕事に、誇りを感じない人はいないんじゃないかと話してくれました。
私たちが宮大工ってかっこいいなーって思うのも、やっぱりその部分なのかなと思います。
あ、支店はありませんので念の為。笑

同じものはつくらない仕事
宮大工のお客さんは神社の宮司さんや神主さん、あるいはそのお世話をしている氏子さんたち、企業からの依頼もあります。
現場でそのお客さんに納品する仕事ですから、ダイレクトにお客さんの反応を聞けるのが醍醐味。やっぱりダイレクトにお客さんに喜んでもらえる仕事は、分かりやすく面白いですよね。
そして一番の面白さは、おそらく他の仕事に比べて、同じものを作ることが圧倒的に少ないことではないかと思いました。
これは普通の大工さんを含めてその場所場所で、オーダーに従ってつくる建築系の仕事は一般にそうかもしれません。
一方で例えば大手のハウスメーカーなんかだと、これを既製品化することで安くしたり、利益を出したりしますよね。
唐箕屋さんの場合はこの既製品の比率がとても小さいですし、既製品と言ってもバンバンそればかり売れるようなものではないので、一度作っても、もう一度それを作るのが半年後とか2年後とか。
そうすると、まあ忘れますよね。ここが難しさでもあります。特注品であればなおさら。毎回が初めてですから。
それゆえに一般の大工であれば3年程度の修行期間ですが、小保田社長の感覚は一人前になるまで、個人差はありますが、10年はかかるとのこと。
一人前の宮大工に求められるのは、図面に書かれてない部分をどう削ってどう組むのか、どう仕上げるのかという、知識と経験をベースにした応用力です。
そのためにはとにかく経験を蓄積していくしかない。そこにじっくり取り組める方、そして毎回違うことをこなすということを面白いと思える人が向いてるのではないかと思われます。

関わったからにはいっぱしの職人に育てたい
今回の募集は職人とそれ以外の職種の2つの同時募集となりますが、職人に関しては、基本的には大工道具が使えることが最低条件ですので、専門学校等で道具の扱いを習っている方を想定しています。
もちろん教えることができない訳ではありませんが、現状はその余裕がないとのこと。道具を使えない方は、別職種での応募をご検討ください。
とはいえ、最初はほとんどできること、役に立てることはなく、最初は掃除やゴミ捨てといった雑用から始まります。
業界的には家族経営の会社も多く、ずーっと雑用ばかりということも少なくないそうですが、小保田社長は「そういう雇い方もしたくない」とおっしゃいます。
普通に考えれば、できる人が作って、できない人が雑用を担当する。それが会社的には効率が良いのは、その通りだと思います。
しかし、「それではいつまで経ってもできるようにはならないから、自分達も仕事が楽にならない。何より本人も仕事が面白くないでしょう。
せっかく入ったからには、いっぱしの職人に育てたい。だから、多少無理してでも、少しずつ仕事をやらせて、覚えさせたい」というのが、社長の考えです。

仕事を任せないと成長しないから
その背景には、社長自身の経験がありました。娘婿として会社に入った小保田社長は、未経験だったけれども、いきなり棟梁が病気になり、先輩職人と一緒に新人の自分が作らざるを得ない状況に。
結果として、入ったばかりであり得ないくらい仕事をさせてもらったそうです。建築系の大学出身でCADが使えたり、多少、勉強してきたこととの親和性があったとはいえ、素人は素人。
今振り返れば、申し訳ないという仕事も少なくないけれど、それで圧倒的に力がついたのは事実。
だから、その時と同じと言わないまでも、できるだけやらせることで、育てるというのが唐箕屋さんのやり方です。
とはいえ、雑用もあるわけで誰かがやらなくてはいけない。チームの中で一人前の職人に育ててもらってる中で、まず最初に貢献できる唯一の方法なのだと、現実的に考えるのが良さそうです。

会社の飲み会をやめた理由
社長による一人前の定義は、図面を渡されてその通りのつくることができること。
図面の通りやればいいんでしょと思うけど、図面に書いてないことが多い。内側がどうなんってんのか、どうやって組み合わせるのか、そこに職人の力量が出るそう。
キャリアのイメージとしては、最初は細かい部品の刻みから。段々と大きな部品を刻み、最終的には自分ひとりで全てができるようになること。丁寧に教えてる方ではないかなと、社長は言います。
途中雑談する中で、会社の飲み会はやめたという話を聞きました。いつも同じ人たちで働いてるから、そのまま飲み行っても刺激にはならないと感じたからなんだそう。
例えば、そこに取引先がいたりだったら違って、外の人の話は刺激になるよねと社長は言います。
こういう考え方。これも社長がいつも社員の成長を考えてる証拠だと思います。
他所で経験がある方については、組み立てを見れば、おおよその力量がわかるとのことですので、経験者の方は、ぜひ実力なりに貢献してください。

業界のやり方をアップデートする
図面の話が出ましたが、実は、業界的にはもっと粗い図面で作ることもおおいのだとか。
もちろん職人の力量に任せれば、仕事はこなせるのですが、それだと品質が安定しない。やる人によって良し悪しがでる。
そうすると、唐箕屋さんに頼めばいつも一定の品質とはならなくなってしまう。
だから、そうした慣習を廃して、一定の品質を担保できるところまで、社長自ら図面を作っています。
お客さんの中には、やはりブランドに惹かれて、ここだけは別の土地の宮大工に任せたいというオーダーもあったそう。けれど社長に言わせれば、残念だけど名前だけで、うちの方がよっぽどいい仕事してると思うんだけど、と感じることも少なくないそう。
そういう自分達の仕事の質に絶対的な自信を持てるのは、やはりそれだけやってきた蓄積があってのこと。
さすが職人と思うと同時に、これはサービス業でも、オフィスワーカーでも、働く以上はどんな仕事でも目指すべき自信なのではないかなとも思います。
そもそも手書きの図面が多いところにCADを持ち込んだりと、よく言えば伝統的、悪く言えば前時代的な宮大工の世界をアップデートしながら取り組んでいる会社さんでもあります。
そうやって質を担保することで、現在の評判を築いてきたんですね。

お城を作りたかった先輩
今、唐箕屋さんには、社長の他に職人は2人。そのうちの1人、松本さんのお話しも伺えました。
熊本出身の松本さんは、宮大工の専門学校を出て唐箕屋本店に就職して、今1年半が過ぎたところです。
元々はお城がつくりたい(!)との夢を抱き、そこから近しい仕事として、宮大工の道へ進んだとのこと。
在学中にいくつか、宮大工の会社に自分で連絡をとり、インターンとして働かせてもらう中で今の会社に決めました。
決め手がなんだったのかを尋ねると、他は「昭和的」な香りのする会社が多い中でなかなか合わなそう、、、と不安が先立つ中で、唐箕屋さんだけは、「ここは合う!」と直感したとのこと。
instagramのハッシュタグで見つけたのが唐箕屋さんだそうで、やっぱりアップデートしてるからこその雰囲気ってあるんだと思います。
念願の仕事に就けて、とにかく毎日楽しくて仕方がないという松本さん。とはいえ、社長も先輩も当然ながら、厳しい時は厳しいそう。当たり前ですが。

ちょうどいい街「岐阜」
1年半やってきて、できることは増えてきた実感はあるそうで、専門学校の同期と比べても、だいぶやらせてもらえてる方ではないかなと言います。
大きな会社に就職した同期もいて、会社が大きい分、大きな仕事に携わってるそうですが、どうしても大きな仕事は分業になりますから、彼は1年半ずーっと同じことをしているとか。
大きい会社の良さ、小さい会社の良さ、どちらが自分に合うのかは慎重に考えたいところですね。
「今あそこ(倉庫)にあるくらいのちょっと大きめのお社。あれがひとりで刻めるくらいになったら、少しは褒めてもらえるんじゃないか。」そこが当面の松本さんの目標だそうです。
ちなみに松本さんは熊本出身ですから、今は実家を離れて一人暮らし。聞くと、岐阜はとっても暮らしやすいとのこと。
家は、名鉄線の駅前にとっても良い条件で借りられたそうで、物価も高くなく、街は大き過ぎず小さ過ぎずで、なんでもあるし、名古屋までも30分ほど。聞いてみると、いいことしかない。
てならい堂も、仕事でいろんな土地を訪ねますが、やっぱり大き過ぎない「ちょうどいい大きさ」が、豊かさにつながるんではないかと思います。

給料の決まり方
お話ししてきた様に、唐箕屋さんは職人の成長をちゃんと考えている会社に見えます。
では、お給料はどうなのだろう。給料を決めるのは社長。年に2回ボーナスがあって、昇給する際にはそのタイミングで伝えるそうです。
いつ、いくらという約束はできないけど、職人としての成長に従って、ちゃんと給与は上がります。職人としてのトップは棟梁ですが、その頃には「岐阜でいえばかなり貰ってるほう」の水準を出したいとのこと。
良い仕事には、良い報酬を。ものづくりを応援する側の私たちもそう願っています。
ちなみに、過去に給料を減らしたのは1人。やっぱり評価によっては下がることもある、厳しい世界であることはちゃんとお伝えしておきます。

辞めた人。キャリアの先。
もう一つシビアな話をすれば、もちろん過去には辞めたひとたちもたくさんいます。130年やってる会社ですからね。
ここ数年で辞めた方は、ひとりは元々独立する志向があって入った人。10数年やって実際なんでもできる段階にありましたが、独立して違うモノづくりの道に進んだそうです。
別のひとりは、40代とちょっと遅めの年齢で入って、早々に自分の技術の限界に気づいてしまった。もちろん社内では別の関わり方もあるのですが、本人のご志向として別の道を選んだそうです。
辞めてしまうことは仕方のないことですが、社長としては仕事の振り方などもうちょっと別のやり方もあったんじゃないかと反省するところもあるそうで、その辺りは今の体制には反映できてるそうです。
改めて、キャリアの話に戻すと、先ほど一人前の定義をお伝えしましたが、もちろんその先もあって、その先では図面を超えた提案ができるかどうか。
例えば同じ仕様なんだけど、予算に収めるためにどうやればいいか。その提案ができるのは、経験とセンスなんですね。
そこまでできる人は、野球で言えば4番バッター。アーティストではないから、どんなにうまくなってもとんでもなく高額にもなることもないけど宮大工の仕事はずっと面白い。
同じ宮大工でもどの会社に所属するか、あるいは個人でやるか、それによって関わる仕事は変わります。自分のやりたい仕事をきちんと見極めて、その会社がどんな仕事が得意なのかをきちんと先に聞いておくのが良さそうです。

職人以外の仕事もある
一方で宮大工というレベルの高いリーグにあって、やっぱり全員が4番バッターになれるわけではないです。
4番を目指すなら器用な方がいい。けれど、全員が4番バッターである必要はないと社長は言います。会社ですから、チームとして働く上で、いろんな役割があります。
だから、ここまで読んでいただいて、興味はあるけど自分には無理だなー、けれどそういう仕事に関わってみたい、という人がいたならば、小保田社長としては大歓迎。
モノづくりとしては、金物を打ったり、色を塗ったりといった仕事もある。
会社ですから営業もあるし、社長と職人の間に入って職人のリソースを管理するようなポジションも、今はいないのだけれど、任せられる人がいればそれは助かるようです。
こうした職人以外の仕事は、働き方も雇用形態も柔軟。例えば週に3日とか、宮大工の仕事に関わってみたいと言う人がいれば、ぜひ相談してみてください。
ただ、やっぱり仕事の質にこだわる会社ではありますから、職人同様、中途半端な気持ちでのご応募はおすすめはしないです。

続けていく会社
唐箕屋さんは今年で130年。これまでも人員は増えたり減ったりの歴史をたどって、とはいっても多かった時でも全部で8人くらい。
やっぱり「長く続けていくのに大切なことは、大きくし過ぎないことなんじゃないか」と社長は言います。
一方で日本の伝統的なことは少しずつ、廃れてきています。それは神社にまつわることもそうで、例えば神社の氏子は減り続けているし、本物のしめ縄が使われなくなってきていたり。
以前、こんな話をしてくれたことがあります。例えば伊勢神宮の御用材は木曽檜を使うので、かつては一般の神社でも木曽檜を使うことは当たり前のようだった。けれど今は伐採の制限もあるし、予算のこともあるから状況は違う。
そこで輸入材を使うことも時代の流れなのかなとは思うけれど、ただ木材には表も裏も、上も下もあるんだけど、そういうことがちゃんとしてない仕事が世に溢れている。
お客さんが選ぶことではあるんだけど、やっぱり自分達の使命としてそういうことを望む人には伝えて行かないといけないのではないかと思う、と。
例えばしめ縄の職人のサポートをしていたり、てならい堂とも一緒に神棚づくりのワークショップを開催してくれたり。「本当はやらなくてもいいけど、自分達がやることで続いていくことがある。」そう、小保田社長は話してくれました。
次の世代につないでいく使命を背負っている仕事。それが宮大工のカッコよさの源泉なのではないでしょうか。
その責任をチーム中で負う覚悟がある人、ぜひご応募してみてください。

募集要項
職種
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職人
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営業 兼 現場監督
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具体的な業務内容 |
・社殿及び神具(宗教用具)等の製作 ・社寺建築工事に関する職人作業 ・納品、取付、配達等の雑務 ・機械のメンテナンス ・工場清掃等を含む、共用物/共有スペースの管理保守作業 ・その他、会社の定める業務
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・見積り、積算等の書類作成及び事務作業 ・依頼主との打ち合わせ及び職人手配、工程/品質/安全管理などの現場統括業務 ・HP更新、SNS運営、オンラインショップ等EC事業の運営管理 ・社殿及び神具(宗教用具)等の販売促進活動 ・納品、配達等の雑務 ・その他、会社の定める業務
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勤務地
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岐阜県岐阜市美園町3丁目4番地
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雇用形態 |
正社員
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●試用期間中は日給制 ●試用期間中の日給は年齢・経験値により決定する(8,000円〜/日) ●通勤手当、雇用保険、社会保険適用 ●その他手当はなし ●正社員登用後の賞与算定期間には算定されません。
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給与 |
●月給180,000円~ *能力、経験等に応じて決定致します。 ●雇用保険、社会保険制度あり(法律に準ずる) ●通勤手当、皆勤手当、家族手当(規定に基づく) ●賞与:年2回(6月、12月) *マイカー通勤可
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勤務時間 |
●就業時間 8:00〜17:30(休憩105分) ●残業あり ●休日:日曜・祝日・第二第四土曜日 *会社カレンダーによる *年次有給休暇あり
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応募資格 |
・大工道具が使えること ・要普通免許 |
・要普通免許 |
応募プロセス
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①下記フォームよりエントリーしてください *応募を検討している方を対象に、半日〜2日間程度の工房見学が可能です。応募前に行いたい方も、下記フォームよりご連絡ください。
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