暑かったり寒かったり、気温の変化が激しい日が続きますね。そんな時は服選びも迷いやすいですが、さっと首に巻けるストールが1枚あれば安心です。

ストールといえば、原始機でストールサイズの布衣を織り上げるワークショップを行いました。

のどかさがあり懐かしさも感じる古民家で、2日間に渡って行った理由。それは、この空間で過ごす時間や、空気、天気、土地そのものを感じてもらいたかったから。

千葉県君津市にある染織伝承館「布衣風衣」

千葉県君津市にある染織伝承館「布衣風衣」

歴史を感じる佇まいと、自然と一緒に暮らしているような心地よさも感じる古民家、千葉県君津市にある染織伝承館が今回の集合場所。

決してアクセスが良い場所ではないにも関わらず、皆さんそれぞれの方法で現地に到着されました。駅から自転車で約1時間かけて来られた方も!

そんな皆さんをお迎え頂いたのは、染織伝承館「布衣風衣」の館長、渡辺一弘さんと豊子さん、それから長年渡辺さんご夫婦の元に通われている3名のベテランメンバーの方々です。

元は新潟県にあった古民家を移築。江戸末期の頃の間取りなんだそう。

元は新潟県にあった古民家を移築。江戸末期の頃の間取りなんだそう。

普段はしまっている貴重な織物にまつわる品を、今回はあちらこちらに展示して間近で見て触れることができるようにしてくれていました。

昔の手織の貴重な暖簾。今回の為に特別に展示してもらいました。

昔の手織の貴重な暖簾。今回の為に特別に展示してもらいました。

初日の午前中は、座学中心。木綿が普及する以前は、身近なところで手に入る植物を使って、自分たちで布を作っていた時代がありました。その中でも麻は衣服や袋類など様々な用途に使われていた、木綿以前の代表的素材。

今から約30年前、麻の布作りを行っていたおばあさんのところへ出向き、家庭用ビデオで豊子さんが撮影したというVTRを見せてもらいました。収穫から糸作り、布作りまで一貫して行っていて、手間暇かけて作られていたことがよく分かります。

ご夫婦で撮影&編集された貴重なVTR資料を見て、感動して泣いてしまった方も。

ご夫婦で撮影&編集された貴重なVTR資料を見て、感動して泣いてしまった方も。

その後は、実物の素材を拝見。麻の他に、フジやフヨウ、シナなどの植物素材や、それらを使って作られた布を広げて見せてもらいました。昔のものなのに、今でも十分使えるほどしっかりした質感。

木綿以前に、布として使用されていた素材の数々。

木綿以前に、布として使用されていた素材の数々。一見同じように見えますが、触ったり間近で見ると硬さや光沢感の違いが分かります。

渡辺さんが作成されたレジュメも参考にしながら知識を深めていきます。その後は、収穫した後の綿に残っている種を取り出す“綿繰(わたく)り”と呼ばれる作業を体験させてもらいました。

綿から、種を取り出す作業。綿の繊維はしっかり種にくっついているので、「ろくろ」と呼ばれる道具で種と綿を分けていく。

綿から、種を取り出す作業。綿の繊維はしっかり種にくっついているので、「ろくろ」と呼ばれる道具で種と綿を分けていく。

綿繰りした綿は、そのままだと繊維が固まっていて紡ぎにくいので、“綿打ち”と呼ばれる、綿をほぐす作業が必要になります。大きな弓のような道具を使い、固い綿をほわほわにほぐす作業を館長が実演してくれました。

綿打ちが終わった綿は、そのままだと糸にしにくいので、“よりこ”と呼ばれる綿を棒状に丸めたものを作っていきます。綿のぬくもりや柔らかさを感じて「生き物のようで可愛い」という声にも納得です。

裏返した一升ますに綿を乗せて、箸を芯にして丸めたものを「よりこ」と呼ぶ。

裏返した一升ますに綿を乗せて、箸を芯にして丸めたものを「よりこ」と呼ぶ。

よりこができたら糸車のツムに引っ掛けて、いよいよ糸紡ぎ体験です。糸車を回すスピードと、よりこを引くスピードが同じでないと糸に撚りがかからないので、その感覚を掴むまでが一苦労。

よりこの先端を糸車に引っ掛けて、綿に撚りをかけていく作業。

よりこの先端を糸車に引っ掛けて、綿に撚りをかけていく作業。

太くなったり、逆に細くなったり、途中でプチプチ切れたりするのを、ほぼマンツーマンで指導してもらいます。「慣れてくると太い糸が作れなくなってしまうから、味わいのある糸ができるのは今のうちだけ」という素敵なアドバイスも。

作業の様子を見守る、渡辺一弘館長。

作業の様子を見守る、渡辺一弘館長。

その合間に、お1人ずつ整経台で整経作業へ。自分の体で経糸を張る原始機を使うため、輪状に整経していきます。

整経台を使って、1人ずつ輪っか状に整経作業を行います。

整経台を使って、1人ずつ輪っか状に整経作業を行います。

使った糸は購入されたものですが、紺色の方は豊子さんが育てた藍で染めたもの。上糸と下糸の色を変えることで、区別しやすく織りやすくなるのだとか。

無心になって糸を紡いでいるうちに、初日の内容が終了しました。

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翌日は、朝から綿の種蒔きを行いました。前日の激しい雨が落ち着きを取り戻したとはいえ、また降るかもしれない曇天の空の下、それぞれ綿の種を手に持ち、土に蒔いていきます。ちなみに、綿は麦と一緒に植えると良いのだそう。

一列に並んで、畑の一区画に綿の種を撒いていきます。

一列に並んで、畑の一区画に綿の種を撒いていきます。

種蒔き後はお待ちかねの原始機の登場です。自分の体で経糸を張ることができる原始機は、場所を選ばず使えるのが嬉しいところ。

原始機に整経した糸を固定し、機こしらえを行う作業はなかなかに複雑で、午前中はほぼその作業で終わりました。

お手本となる動作を見せてくれている豊子さん。

お手本となる動作を見せてくれている豊子さん。

経糸を上下に開きやすくするための綜絖(そうこう)と呼ばれる器具を使って、緯糸を通していきます。この時、伸ばした脚や腰をゆるめると綜絖を持ち上げやすいんです。

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経糸を結べる柱があれば、その方がやりやすい方も。だけど今の住宅は柱がない家が殆ど。その場合は、テーブルの脚などで代用もできます。

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うっかり手順を間違えてしまった場合でも、修正する知恵があれば怖いもの無しですね。何度も経験されてきたからこそ、失敗をリカバリーする力が身に付くんだなと感じました。

手から手へ。

手から手へ。

豊子さんから、原始機の技術を応用して作られている地機の紹介もしてもらいました。原始機との類似点や、他の織り機と地機との違いなども知ることができ、織り機を使うことにもむくむくと興味が湧きます。

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織り方のコツを掴んだ後は、そのまま織り続ける方や、糸紡ぎをする方、お持ちのハンドカーダーを持参し、綿糸を紡ぐ方法などのアドバイスをもらったりする方も。

できることを少しづつでも生活の中で続けていくことが大切だと渡辺さん。コタツをひっくり返して脚の部分を使えば整経台にだってできる。糸車がなくても、手作りでスピンドルを作ることだってできる。原始機も竹やラップの芯を生かした手作りの品。

人から人へ受け継がれた、普通の暮らしの中で織られてきた布衣作りの手技は、身近なもので応用できる知恵もたっぷりつまっていました。

布衣風衣に通われている皆さんの作品。どれもこれもため息が出るほど素敵。

布衣風衣に通われている皆さんの作品。どれもこれもため息が出るほど素敵。

次回は、種蒔きをしたところが育ち、綿が収穫できるようになる秋頃に再び開催できたらなと考えています。

渡辺さんご夫婦に教室メンバーの皆さん、そして参加された皆さん、本当にありがとうございました!