こんにちは。てならい堂スタッフの松本です。

「梅雨明けるみたいですよー!」と話題になった6月最後の土曜日。その二日後には本当に関東観測史上最短の梅雨明けとなりました…!この夏の暑さどうなるのでしょう、、

昨年開講した行庵先生の”深める金継ぎ”と“初めての蒔絵”教室。欠けた器編から割れた器編に進み、6月に第一回の教室が無事に終了しました。その第一期生となる教室の生徒さん向けに、金継ぎを通して学びを深めた「蒔絵」を、さらに一歩進めてご自身の手で“蒔絵の道具も作ってしまおう”というワークショップを開催しました。

行庵先生よりまず始めに「粉蒔き」は蒔く金属粉の種類・粉の大きさ・どのように仕上げるかによって、それぞれに蒔き方が異なること、その際に必要な道具4点「真綿のタンポン」「粉筒」「粉匙」「粉鎮」を皆さんに実際に作ってもらいます。と説明がありました。

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主に3つの蒔き方があり「真綿蒔き」、「毛棒蒔き」、「粉筒蒔き」を実演してもらいながら道具作りがスタート!

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①「真綿蒔き」真綿で消粉を蒔く

消粉と呼ばれるとても粒子の細かい金属粉は漆に沈み込んで研ぐことが難しい。そこでフワフワの真綿に粉を取り、半乾きの漆の上から粉を蒔きながら一緒に磨くことで粒が潰れて面ができ、ツヤや輝きが出るのだそう。

真綿と言っても、この状態では蒔くことはできません。

お蚕さんの繭玉1つ分くらいなんだそう!

お蚕さんの繭玉1つ分くらいなんだそう!

そこで、真綿を小さく丸めてタンポン状にしたもの2つ作ります。真綿の縁を内側に折り込んで丸くまとめて、さらに折りこんで出来るだけ小さく丸める。押し込んだ方を上に向けて上から綿を引っ張り出す。しっぽを出すように引っ張って根本にクルクルと巻き付けて完成!

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大きさを大・小2つ作って金粉用、銀粉用など、用途を分けて使用すると良いそう。グラシン紙で包んで袋に入れて保管するのがおすすめ。

②「毛棒蒔き」毛棒で消粉・丸粉を蒔く

その名の通り、棒に毛がついた筆のような形状で、金属粉を筆に取り指でトントンと蒔き、漆の上に粉がのったら優しく撫でるように粉を掃き込んでいきます。

毛棒と一言でいっても小中大、特大と様々。今回のワークショップでは、こちらの毛棒は1本行庵先生からプレゼントとして配られました!真綿と同様に、2本あれば金・銀それぞれ専用の毛棒として使い分けて蒔くのがおすすめ。

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湯呑みやマグカップなど、深さがあり手が届きづらい時は、特に毛棒蒔きが最適。様々な粉の細かさに対応できるのも魅力。

③「粉筒蒔き」粉筒で丸粉を蒔く

金継ぎ蒔絵教室で皆さん実際経験したのが、この粉筒を使った「粉蒔き」なのですが、 使い方は知っていても、「では作れますか?」と聞かれたら「えっ?!」となるはず…。蒔絵で使用する丸粉は研ぎ出してはじめて輝くので、使用する粉の大きさで本来メッシュの細かさも変える必要がありますが、今回は教室で使用した4号粉で初心者でも粉蒔きしやすいものを使って作っていきます。

まずは、材料となる「葦」の説明をしてもらいつつ、太い葦と細い葦の2本を選んで磨くところから始めます。葦は切って1年干し水分が抜け硬くなったものを、小口を鈍角と鋭角にカットして使用します。

なんと、こちらの粉筒用の「葦」は行庵先生のお父様が用意してくださったもの!

なんと、こちらの粉筒用の「葦」は行庵先生のお父様が用意してくださったもの!

小口にやすりをかけて筒の中をブラシで磨いたら下準備終了。

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両端をペーパーやすりで丸めない程度に磨きます。

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粉筒は鋭角側から粉を入れて鈍角側で粉を蒔きます。案外間違いやすいので、鈍角側の小口を確認してからメッシュを貼り、水貼りテープで留めるという一連の流れをイメージしておくとこの先の作業がスムーズです。

水貼りテープは筒の円周より5mm程長くカットしておきます。

後程、貼る時の目安として筒に下線を引いておくと後でラク!

後程、貼る時の目安として筒に下線を引いておくと後でラク!

両面テープで一度筒を一周巻き終えたら、2枚目に上の先端を裏紙をつけたまま貼り付けて、筒の形に合わせて切り取ります。切り終えたら裏紙を剥がしておきます。

続いて、メッシュ貼りの作業。行庵先生の切り方のイメージを確認し、まずは余白を持たせた菱形にカットして筒に貼り付けます。

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こんな形に切っていきます。ハサミの先が細いと切りやすくて便利。

こんな形に切っていきます。ハサミの先が細いと切りやすくて便利。

先程、カットしておいた水貼りテープに少量水をつけて、筒の先端に合わせて側面で留まるように貼り付けます。余分な箇所を小口の形に切り揃えたら完成!

綺麗な粉筒が出来上がりました!

綺麗な粉筒が出来上がりました!

 

ここからは、粉筒に粉をすくって入れる時に便利な「粉匙」と、グラシン紙に粉をのせた際に押さえとなる「粉鎮」を作る、少々力のいる作業に入ります…!

「粉匙」作りは純銅の銅線を匙の長さにカットして、匙の形に叩いて成形する作業です。

ただ、叩いて叩いて伸ばす。簡単そうに思えるかもしれませんが、全然思った通りの形には伸びてくれません。。トンカチで小さくほそ〜い匙を作る経験なんて、皆さんもちろん無いですから、当然といえばそうなのですが。

叩く叩く…!先の方が広がる形が良いそう。

叩く叩く…!先の方が広がる形が良いそう。

ある程度形になったら、行庵先生に見てもらいつつ調整をして、最後にペンチでグイッと匙の形に曲げたいところを持ち上げ完成です

「粉鎮」作りは真鍮3mmの角柱を任意の長さでカットし、カットした両端をペーパーやすりで磨く作業です。力があればできると私も思っていたのですが、ノコギリを扱うコツの方が大事のようでなかなか思うようにカット出来ません。。

ノコギリに慣れていないと刃先が入っていかず、力のかけ方もわからず難しい!

ノコギリに慣れていないと刃先が入っていかず、力のかけ方もわからず難しい!

3mmの角柱に苦戦してようやく切り出した棒がなんともすでに愛おしい。。

切り口を240番のペーパーやすりで磨いて完成!

切り口を240番のペーパーやすりで磨いて完成!

皆さん、それぞれに作業の不得手がありながらも、無事に誕生した産まれたてホヤホヤの道具たちを目にして喜びもひとしお。

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「真綿蒔き」、「毛棒蒔き」、「粉筒蒔き」に必要な道具が全て揃った今回のワークショップ。

金継ぎのお供に手作りの道具が加わり、今まで以上に楽しく金継ぎを続けることが出来るのではないでしょうか。そして、日々使い続けて味わい深く育った行庵先生の道具のように、これから皆さんの道具もどんどん手に馴染んで愛着が増していく気がしています。

ご参加いただいた皆さん、行庵先生ありがとうございました!