てならい堂では自分にとって心地よく、社会にも環境にも良いことをしていると感じられる生活を、”こころよい生活”と呼んでいます。これまでもそれを知るための様々な機会を模索してきましたが、さらにさらに自分たちにとって”こころよい生活”を探すために、この夏から季節ごとにテーマを決めて、取り組んでいます。

2021年夏のテーマは「育てる道具を使ってみる」です。

7月には「育てる道具」がどんなものなのかについて、考えてみました。8月には、育てるという意味での”お手入れ”について取り上げました。素材によるお手入れ、今やっている、これからやりたいお手入れなどを点検してもらえましたでしょうか。

あなたにとっての育てる道具とは、どんなものでしょうか。あなたの育てる道具を、この先もずっと育てるということを、考えてみませんか?正解はありません。今月も、生活の中での振る舞いや使う道具を見直したり、時にはてならいにも参加して、ご自宅で自身の答えを探し続けてみてください。

今月は「育てる道具を使ってみる」について考えてみる会」も開催しますよ。ややこしいタイトルですいません。笑

 

 「育てる道具を使ってみる。」9月の話題。

 

1)育てた道具を受け継ぐ

2)道具を受け継いでいく方法

-金継ぎで器を直して受け継ぐ

-古い着物を解き、縫い直して受け継ぐ

-良い漆器を受け継ぐ 

3)自分にとっての育てる道具を考えてみる集まり


1)育てた道具を受け継ぐ

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例えばヨーロッパでは、家の中の家具や道具が親子三代にわたって使っているものということがよくあるそうです。新しいものよりも、古いほどに価値が上がるんですよね。

だから道具は、使い続けられること、メンテナンスすることを前提に丈夫に作られているし、そうした技術を学ぶためのワークショップが盛んで、値段も決して安くはないけれども、けれども皆、高いとも思わないそうです。それがカルチャーだから。

素敵だし、羨ましいなーと思いますね。日本の場合はどうでしょうか。かつて使い続けるという文化は日本にもありました。根底に有名なあの言葉”もったいない”の意識があったはずです。それは日本がまだ豊かでない時代だけのものだったのでしょうか。

麻や綿などの作物は、昔は高価なものでした。だからボロボロになるまで使ったし、ボロボロになった後も用途を変えて使いきりました。それはそこにかかる手間暇を思っての”もったいない”の意識もあったのではないか、とも思います。

今でも、森や自然に関わる仕事をしている方とお話をすると、「使わせてもらっている」という言い方をよくされます。「木を一本もらったら、一本返す」とも。

国土の大半が森林である日本で、その森林の近くにいる人ほど、限りある生命を使わせてもらっているという意識をもってらっしゃいます。

そのままならば森で生き続ける命をいただいたのだから、生活の中で別の形で生き続けさせるような役割を私たちも持っているのではないか。それはつまりその道具を育てるということ。日本の伝統や文化、自然を感じながら生きることは、現代の都市生活の中でもできるのではないかと思うんです。

改めて、道具を育てることを考えてみませんか。そして、願わくばその道具が子供達の世代にまでつながるように。


2)道具を受け継いでいく方法

金継ぎで器を直して受け継ぐ

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昨今、人気の金継ぎ。てならい堂が金継ぎに取り組み始めた2015年頃にも、先生方と「流行ってますねー金継ぎ」という話をした記憶がありますが、その後もその勢いは年々増しているように感じます。

金継ぎの魅力はやはり、壊れてしまった器を直せること。それも壊れる前よりも美しかったり、かわいかったり直せるからでしょう。

てならい堂では自分で直す金継ぎ教室や、金継ぎの修理を受け付けていますが、それはつまり多くの方が、直したい器があるということ。

「買ったほうが安いじゃん」という声も世の中にはあるわけですが、金継ぎという方法を選択する当のご本人たちは、そんなことは思わない。お父さんやお婆さんや大切な人との思い出の品を手元に置いてたい、使い続けたい、金額とは全く別の次元の動機です。

私たちが持っている“基準”は、本当はお金なんかじゃないんですよね。

思い出の器が、新しい景色で蘇る。それが親子3代に伝わるお茶碗ならさらに4代目にも受け継ぎたい。金継ぎによって、そうやって世代を超えて育てる道具が生まれています。

金継ぎを知って金継ぎに触れた皆さんが、口を揃えて言います。「ああ。あの器、捨てなきゃよかった。」そうなる前に知っておいたほうがいい技術ですね。

■ 【かいもの】金継ぎキット

■ 『器の金継ぎ修理』依頼

■ 【てならい】初めての「金継ぎ教室」やってみませんか?


古い着物を解き、縫い直して受け継ぐ。

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和裁は縫い直せる。意外とまだ知らない人も多いかもしれません。

貴重な絹の生地で縫い上げられた一枚の着物。これを解き直して、サイズの違う着物に仕立てたり、別の小物にしたりできるですね。

つまり、後で解ける様に縫うのが和裁の技法です。初めて聞いた時、おもしろいなーと思いました。そして素敵だなと。

てならい堂では運針の教室を手始めに、その後、中級編となる和小物を縫う教室、そして上級者向けに、自分の着物を縫う教室と3段階のコースを用意しています。また、これ以外にも自分で染めた生地を縫うワークショップなども時折開催しています。

初めてという方、昔学生の頃に学校でやったという方。皆さん自分の手先の器用さを確認しながら(笑)、けども楽しそうに取り組んでらっしゃいます。

そうやって自分で縫える、直せる、作れるという技術を身につけることは、道具を受け継いでいく基礎になりますね。

また、同時にそのぬい直せる様につくられた着物が、着物文化の変化から大量にタンスの肥やしとなり、そしてタンス自体が消えゆくのに合わせて、捨てられてしまっているようです。

てならい堂ではこの秋、そんな皆さんのおうちにある着物をアップサイクルすることも、ひとつご提案したいと思ってますので、ご期待ください。

ひとまずは、基本の運針からどうぞ。

 

【てならい】ツヅクキモノの和裁教室 ~初めての運針~


良い漆器を受け継ぐ

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良い器といえば漆器。

けれどもいつからか大切にしまっておくための道具になっていまったようで、本当は大切にしまうのではなく、大切に使うのがいいんじゃないでしょうか。

大切に使うというのは、気を使って使うんじゃなくて、がしがしふだん使いして、使った後にちゃんと手入れするということ。万一壊れてしまうならば、直せばいい。そうやって受け継いでいけるのが良い器ではないでしょうか。

本物の漆器が失われつつあるそうですね。本物の漆器とは?定義は難しいのかもしれませんが、例えば漆に混ぜ物がされていても、漆器と呼ばれる。器の素材が木でなくてプラスチックで、その上に漆を塗ったものも漆器と呼ばれる。

私たちの感覚ではこれらは本物とは思いづらいですよね。けれども、中身がプラスチックだったりするともうこれは、プロのつくり手でもわからないそうです。

ちゃんとしたものが無くなってしまうんじゃないかってちょっと不安になります。それは”お金”ということだけを基準にし続けてきた結果かもしれません。

私たちの世代が、今ちゃんとしたものを手に入れて、子に受け継いでいく。てならい堂は、そうやって私たちが続けていきたいというモノを次の世代に繋ぎたいと思います。皆さんはどうでしょうか。

 

【じっくりえらぶ】輪島キリモトの漆器、借りて、触って、使ってみませんか?


3)自分にとっての育てる道具を考えてみる集まり(てならい365日のススメ)

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いかがでしたか。てならい堂ではこの3ヶ月、身の回りの育てる道具を探してみること、お手入れしながらそれを育てること、そしてその道具を子供に受け継いでいくことなどを、考えてみました。

皆さんにとっての育てる道具とは、どんなものでしょうか。もしよかったら一緒に考えてみませんか。「ちょっと気になってたけどとっかかりがなくて、、、」という方も、「そんなこと微塵も考えたことなかったよ」という方も、心の中をたどっていくと、意外な発見があるものです。

9月に「育てる道具を考えてみる会」と題したワークショップを開催します。これは自分の思考を確認するワークショップです。店主がナビゲートしますので、その場で質問に答えながら、他の参加者の答えを聴きながら、不思議と自分にとっての「育てる道具とは」が見つかるはずですよ。なーんの準備もいりませんので、お気軽にどうそ。

また、ひとりひとりがご自宅で自分の生活を見つめ直してみる機会を、『てならい365日』と名付け、皆さんにオススメしています。会場は自宅ですし、参加者は今日はおひとりですけれども、これだってひとつのワークショップと言えますよね。

やり方は簡単。ノートを用意して、テーマについて書き出してみる、以上です。けれど騙されたと思って書いてみてください。書き出された文字を見ていると不思議と次々と新しい考えが思い浮かぶものです。

そうやって自分の考えを進めていくことが、自分にとっての「こころよい生活」を見つけることにつながると思うんです。そして、はっ!とした気づきがあったら、ぜひてならい堂に共有してください。メールでもいいですし、てならいに参加した時や、ひみつの小店に来た時に、そっとスタッフへ教えてください。

もしかすると同じワークショップに参加した人も、実は自宅でてならい365日に取り組んでいる仲間で、お互いに共感できるかもしれませんよ。

よーし、ちょっと考えてみようかな。と思ったあなた。今回は、「育てる道具をお手入れしてみる」を考えるにあたり、今月は次の2つのことを考えてみてはどうでしょうか。

⑤道具の表情を観察してみよう(経年変化のこと)
長く使った道具はどんな感じになっていますか?ご自身の子供がこのものを使っている姿が想像できますか?

⑥受け継いでみよう
道具が親から子へ、そのまた子へ受け継がれる。最高じゃないですか。子供へ受け継げる道具を、直したり、手入れをしたりして、実際に受け継いでみましょう。

先月のページもごらんください。)

どんなことでも結構です。まずはノートに書き出してみてください。どんなノートでも構いません。構いませんが、形から入りたいという方(笑)向けに、てならい365日専用ノートもありますよ。

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ノートの購入はこちら


さて、色々と育てる道具についてご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。

「育てる道具を使ってみる」のテーマも来月9月で最終回。また違った視点で新しい話題や機会をご提案しようと思っています。今後、てならいの参加者募集とともに、てならい便り(メルマガ)にて随時このテーマについてご案内していきますので、まだの方はぜひこちらからをご登録くださいね。

「こんなことも知りたいよ」みたいなご要望あれば遠慮なくお問い合わせフォームやメルマガにご返信ください。

今月も皆さまのご参加をお待ちしています。てならいの会場で、神楽坂(ひみつの小店)で、色々とお話ししましょう。

育てる道具のある暮らし
道具を育てて私も育つ
こころよい生活ができていく
いつもの場所にいつもの道具
いつか子供に受け継ぐために