てならい堂では自分にとって心地よく、社会にも環境にも良いことをしていると感じられる生活を、”こころよい生活”と呼んでいます。これまでもそれを知るための様々な機会を模索してきましたが、さらにさらに自分たちにとって”こころよい生活”を探すために、この夏から季節ごとにテーマを決めて、取り組んでいます。

2021年夏のテーマは「育てる道具を使ってみる」です。

7月には「育てる道具」がどんなものなのかについて、皆さんに考えてもらいました。それは使っていくうちにどんどん経年変化が生じるものかもしれないし、自分にとって無くてはならない相棒かもしれません。正解はありませんから、ぜひご自身が思う「育てる道具」を見つけだしてみてください。

※7月の特集ページはこちら

あなたにとっての育てる道具とは、どんなものでしょうか。あなたの育てる道具を育てるために、あなたは何をしていますか?今月も、生活の中での振る舞いや使う道具を見直したり、時にはてならいにも参加して、ご自宅で自身の答えを探し続けてみてください。

 

 「育てる道具を使ってみる。」8月の話題。

 

1)育てるためにお手入れする

2)道具をお手入れしてみる

-木のまな板のお手入れをしてみる

-拭き漆のお皿をお手入れしてみる

-鉄のフライパンをお手入れしてみる 

3)育てる道具とお手入れについて考えてみる(てならい365日のススメ)


1) 育てるためにお手入れする

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育てているということは、大切に長く使っていると言い換えられるかもしれません。皆さんには大切にしている道具はありますか。それは使うことで生活を豊かにしてくれる道具ではありませんか。

シュロの箒で掃除をする時に箒が床に当たる感触の気持ち良さ、母親からプレゼントされた革の財布の柔らかい触感、食材を切るときに広がる檜のまな板の香り、、、これらはどれも、生活をより楽しく、豊かにしてくれます。

こうした道具たちを、できるだけ長く続けて使いたいと願っています。そのために私たちが知っておきたい”道具のお手入れ”方法。それはわざわざお手入れと呼ぶほどもない様な些細なコトから、ちょっと手間がかかるやや専門的な方法まで、色々なやり方があるでしょう。

ちょっと知っているだけで道具が長持ちする様な、道具ごとのお手入れ方法を知るために、てならい堂は、作り手と繋がっていたいと思うのです。

良い道具を手に入れることで終わるのではなく、やっと手に入れたその良い道具を長く使い続けるための知識やお手入れのことを知ること、そちらの方が私たちの生活にとっては本番ですよね。

日々の生活で使う大切な道具のお手入れ方法を、一度点検してみてはいかがですか?


2)道具をお手入れしてみる

木のまな板をお手入れしてみる

自然素材である木のまな板は、なんだかすごく気を使う必要がある様に思っている人も多いのではないでしょうか。けれどもてならい堂が、岐阜のまな板のつくり手woodpeckerさんから教えてもらったお手入れ方法は、とっても簡単なものでした。

「たわしを使って洗うこと」「しっかり水分を拭きとること」そして「風通しの良いところで陰干しする」こと。木のまな板はたったこれだけのお手入れでずっと使い続けることができる道具なんだそうです。

食材を切るときに、木のまな板に包丁の切り跡が残ってしまうことってありますよね。切り跡がつかないためには、包丁の刃よりもまな板の方が硬い必要がありますが、それだと刃こぼれしてしまう。大切な包丁の刃を守るために、木のまな板は柔らかい素材である必要があるわけです。

だから必然的に付くことになる切り跡は、しっかり洗ってあげましょう。表面だけを洗うスポンジよりも、切り跡の中に入った汚れまでをしっかり掻き出せる、たわしをオススメされました。

シュロのたわしを使って洗った後には、吸水性の良いふきんを使って、しっかり水分をとりましょう。写真のガラ紡のふきんは、凹凸があって、糸の縒り(より)を甘くしてあるので、吸水性がとても良いです。できたらひみつの小店で実物を触ってもらいたいのですが、とっても柔らかいんですよ。

吸水性の良いふきんですと他にカヤのふきんなども有名ですが、とにかく拭く布が何であれ、しっかりと水分を拭き取らないと、そこが黒ずみの元になってしまいます。

水分を拭き取った後は風通しの良いところに影干しします。天然素材なので乾燥しすぎても良くないし、反り返ってしまったり割れてしまう可能性もありますので天日干しはおすすめしません。まあ、キッチンであれば大抵は陰干しになりますから、問題は風通しの方でしょう。

植物を育てるのとは違って、風がびゅーびゅー通る必要はありませんが、気をつけたいのがまな板の接地面。どうしてもそこに水分が溜まって、黒ずみやすくなってしまう。だからワイヤーの上に乗せたりして、ちょっと浮かせた様な状態で風が通る状態をつくってあげるといいそうです。

とはいっても、使っていくうちに傷や黒ずみなどができる場合がありますね。黒ずみは一見カビの様にも見えますが、woodpeckerさんが検査機関に出したところ、人体に有害なものではないそうです。

とはいえ、見た目があんまり良いものではないので、このようなときには削り直して使うことができるのが、木のまな板の良さ。少し表面を削ってまるで新品の様になっておうちに戻ってきたまな板を手にしたらきっと、また改めて長く使い続いたいなあと感じると思います。あまり頻繁に削り直す必要はありませんから、迷った時は作り手さんに相談できるといいんですけどね。

てならい堂ではwoodpeckerさんのイチョウの木のまな板をご紹介しています。もし木のまな板のお手入れ方法や削り直しについてのお悩みがありましたら、ぜひお声掛けくださいね。

■ 【かいもの】まな板お手入れセット

■ 【おはなし】お手入れサロン〜まな板編〜


拭き漆のお皿をお手入れしてみる

皆さん、拭き漆ってご存知ですか?

漆器と言われると、塗りものの器を思い浮かべる方が多いと思いますが、拭き漆にはあまり馴染みがない方もいるかもしれません。塗り漆の漆器と比べるとよりカジュアルなのがこの拭き漆です。

塗り漆は何度も漆を厚く塗り重ねることで、丈夫さとツヤを出していきますが、拭き漆は、一度塗った漆を拭き取って、木に浸透させながら何度も塗り重ねていく技法です。拭き取るので薄く仕上がり、元の木目がそのまま活かされ、木地の風合いを楽しむことができるのが特徴です。

しかし、木地の風合いが楽しめるくらい薄く仕上げているお皿は日常で使っていくうちに、少しずつ少しずつ、手触りが変化してきます。触ると木のカサカサした感じがしたり、スプーンなど直接口にするものであれば、口当たりが悪くなったり。

でも大丈夫。これは塗料としての漆が薄くなってしまっている状態ですから、元の様に塗り直して、いや拭き直してあげればいいんですね。

塗り漆と比べてずっとカジュアルだと先もお話ししましたが、つまり、専門の作り手さんにお願いすることもなく、ご自身で薄くなった部分にまた漆を塗って拭き取る工程を繰り返して、自分でお手入れすることができます。

てならい堂では7月に、拭き漆のお皿ワークショップを行いました。一度自分で作り方を体験することが、その後、自分でお手入れする方法に直結する。育てる道具と向き合う時に、これってなかなか大切なことだと思いませんか。

拭き漆のワークショップはご好評につき、9月にも実施しますので、よかったら覗いてみてください。

■ 【てならい】漆のお皿を自分で仕上げる。初めての拭き漆ワークショップ


鉄のフライパンをお手入れしてみる

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育てる道具と言われて、鉄のフライパンをイメージする方も多いかもしれません。一方で、使っていない人からすると、なんだか難しそうに思われがちな道具と思います。

てならい堂ではmetalNEKOの金子さんと一緒に、フライパンづくりのワークショップを過去に開催してきました。その際であったり、「つくり手のおはなし会」などでも、鉄のフライパンのお手入れについて、繰り返し教わってきました。

金子さんが教えてくれたのは、「いや特に何も考えず、普通に使えばいいんですよ。」ということでした。え?そうなんですか、普通なんですか?ちょっと衝撃ですよね。

とはいえ普通って、、、ということで金子さんの話を紐解くと、つまりこういうことでした。

鉄のフライパンのポイントは油膜です。油を敷いて、火にかけて焼き付けることで、そして使い終わって落ち着かせることで、鉄の表面に油の膜が重なっていきます。この油膜により、食材がくっつかずに、高い温度を伝える使いやすいフライパンになっていきます。

つまりフライパンを使えば使うほどに、フライパンは育ち、使いやすくなっていくんです。「普通に使えばいい」金子さんがいった通りです。

けれども、油膜が十分でない状態で、洗剤で洗いすぎたり、酸性の食材を煮込んだりすると、油膜が剥がれてしまい、食材がくっついたり、焦げ付いたりしてしまいます。このイメージが私たちに鉄のフライパンを難しく感じさせてるのかもしれません。

金子さんのmetalNEKOのフライパンはそうならない様に、最初に写真の様に、しっかりと油を焼き付けた状態で販売しています。ワークショップでつくったフライパンもそうです。そうすることで、地道に油膜を育てなくても、いきなりガシガシと使える、使いやすいフライパンになるわけです。

逆に、せっかくの油膜が落ちてしまった場合も、この金子さんの方法に習い、フライパンの周りに油を塗って、10分程度炎と煙を上げさせながらしっかりと焼き付けることで、ご家庭でもこの油膜をしっかりつけられると教えてくれました。

なお実際にやってみる場合は、換気扇をしっかり回して、くれぐれも火災報知器がならない様に、注意してくださいね。

■ 【おはなし】つくり手のフライパン学


3)育てる道具をお手入れしてみるについて考えてみる(てならい365日のススメ)

いかがでしたか。木のまな板、拭き漆のお皿、鉄のフライパンの使い方やお手入れ方法などについてご紹介しましたが、道具ごとに様々なお手入れがありますよね。

ぜひ皆さん、自分の生活を眺め回しながら、お手入れして長く使い続けていきたい道具について考えてみませんか?案外たくさん出てくるかもしれませんよ。

てならい堂では、そうやって自分の生活を見つめ直してみる機会を、『てならい365日』と名付け、皆さんにオススメしています。会場は自宅ですし、参加者は今日はおひとりですけれども、これだってひとつのワークショップと言えますよね。

やり方は簡単。ノートを用意して、テーマについて書き出してみる、以上です。けれど騙されたと思って書いてみてください。書き出された文字を見ていると不思議と次々と新しい考えが思い浮かぶものです。

そうやって自分の考えを進めていくことが、自分にとっての「こころよい生活」を見つけることにつながると思うんです。そして、はっ!とした気づきがあったら、ぜひてならい堂に共有してください。メールでもいいですし、てならいに参加した時や、ひみつの小店に来た時に、そっとスタッフへ教えてください。

もしかすると同じワークショップに参加した人も、実は自宅でてならい365日に取り組んでいる仲間で、お互いに共感できるかもしれませんよ。

よーし、ちょっと考えてみようかな。と思ったあなた。今回は、「育てる道具をお手入れしてみる」を考えるにあたり、今月は次の2つのことを考えてみてはどうでしょうか。

③育ててみよう
あなたの道具はどうやったら育つでしょうか。育て方=手入れの仕方を考えてみましょう。

④つながりましょう。
困ったときに気軽に連絡できる作り手さん、あるいは仲間がはいますか?

(①と②については、先月のページもごらんください。)

どんなことでも結構です。まずはノートに書き出してみてください。どんなノートでも構いません。構いませんが、形から入りたいという方(笑)向けに、てならい365日専用ノートもありますよ。

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さて、色々と育てる道具についてご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。

「育てる道具を使ってみる」のテーマも来月9月で最終回。また違った視点で新しい話題や機会をご提案しようと思っています。今後、てならいの参加者募集とともに、てならい便り(メルマガ)にて随時このテーマについてご案内していきますので、まだの方はぜひこちらからをご登録くださいね。

「こんなことも知りたいよ」みたいなご要望あれば遠慮なくお問い合わせフォームやメルマガにご返信ください。

今月も皆さまのご参加をお待ちしています。てならいの会場で、神楽坂(ひみつの小店)で、色々とお話ししましょう。

日々の道具のお手入れ
作り手がつくったものに、
使い手が命を吹き込む
暮らしの思い出も一緒に
たった一つの私の道具