てならい堂では自分にとって心地よく、社会にも環境にも良いことをしていると感じられる生活を、”こころよい生活”と呼んでいます。これまでもそれを知るための様々な機会を模索してきましたが、さらにさらに自分たちにとって”こころよい生活”を探すために、これからは季節ごとにテーマを決めて、取り組んでみようと考えました。

2021年夏のテーマは「育てる道具を使ってみる」にします。

育てる道具ってどんなものでしょうか。なぜ私たちは育てる道具に惹かれるのでしょうか。皆さんも惹かれたことはありませんか。そして、育てる道具があると生活はどのように変わるでしょうか。

「育てる道具を使ってみる」を考えるために、
 てならいに参加してみる。
 てならい堂(ひみつの小店)に遊びに来てみる。
 自身の生活の中で見つめ直してみる。
それぞれのやり方で、皆さんも自分にとってのこころよい生活を探してみませんか。

てならい堂では関連したワークショップの開催や、神楽坂のてならい堂(ひみつの小店)では、育てる道具の展示や販売をしていますので、ぜひ遊びにきてください!

 「育てる道具を使ってみる。」7月の話題。

 

1)育てる道具ってなんだろう

2)実際に育ててみる

-木のスプーンを育てる

-漆の器を育てる

-手づくりのほうきを育てる

3)育てる道具について考えてみる(てならい365日のススメ)


1) 育てる道具ってなんだろう

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「育てる道具」ってなんでしょう。買った時が最高!ではなくて、使うほどに良くなり、生活に馴染むモノだとてならい堂は考えています。育てる道具に囲まれた生活はとっても豊かだと思いますよ。

時間が経てば経つほどより生活に馴染んでいくモノは、どんな素材で作られているでしょうか。思いつくのは、木、漆、革、鉄、真鍮、、、基本的には自然素材のものですよね。

だんだん自分の体に合わせて柔らかく馴染んでくる革の靴や、使い込むうちに、色や艶の変化がでてくる漆器や、使ってる人の癖に合わせて形がすり減っていく箒などなど。経年変化しづらい陶磁器の器だって、欠けた部分を金継ぎで補修しはじめたら、これはもう育てる道具ですね。

穴が開いたから、割れてしまったから、古くなったから捨ててしまうのではなく、いつまでも自分と一緒に生きていく育てる道具たち。

育てる道具は色んな素材で作られていて、それぞれお手入れ方法も違います。良い道具を手に入れることも大事だけれども、良い道具を長く使い続けるための知識やお手入れのことを知っていると、もっと良いお付き合いができると思います。

さて、皆さんはどんな道具を育てていますか。


2)実際に育ててみる

木のスプーンを育てる

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私たちにとって木の道具は身近です。家具やお皿や、そしてスプーンも。けれど、市販の木の道具はそのお手入れの手軽さからウレタン塗装されていることがほとんど。確かに水に強いし、汚れたら水拭きでさっと汚れも取れる。

けれど本来の木の質感とは違いますし、だんだんとウレタンが劣化してきて、剥がれてしまうと塗装し直すことも難しいです。

それに比べて自然素材を塗料として使っていれば、木の表情も生かせるし、だんだんと薄くなってきても、何度でも自分で塗り直すことができます。これこそ育てる道具と言えるんじゃ無いでしょうか。

自然素材でも使いやすいのがオイル仕上げ。オリーブオイルなど、身近にあるオイルを木に染み込ませて乾かすだけ。オイルが染み込んで元の木の色と変わっていくのも楽しいですね。

木のスプーンの良さは、その口当たりのあたたかさ。使い続けるうちに段々と歳をとっていくスプーンに、何ヶ月かに一度、オイルを染み込ませてあげる。きっと一生手放せない相棒になると思います。

■ 【かいもの】てならい堂の「育てるスプーン」。できました。

漆の器を育てる

さて、先ほどのオイル仕上げも手軽で良いのですが、自然素材の塗料といえば、何と言っても漆です。てならい堂では金継ぎ教室で大活躍の漆ですが、やっぱり木の塗料としての方が有名ですね。

漆で仕上げた木の器、しなわち漆器(しっき)ですけれども、漆を使う理由は、何と言ってもその器を長持ちさせるため。木そのままよりも堅牢度が高く(堅くて丈夫とうことですね)、漆には抗菌作用もありますし、木の風合いを活かしつつも、そこにさらに漆の風合いも楽しめます。

一口に漆器といっても、漆の仕上げ方は様々。分厚く塗り重ねてツヤを出したものや、あえてマットに仕上げたもの。あるいは一度塗った後で拭き取ってしまい、木の風合いをより活かす拭き漆と呼ばれる技法なども。

それぞれに良さがあり、それぞれに目的があります。英語でjapanと呼ばれるその器を、ちゃんと使いこなせるように、そして育てて、子供に引き継げるようになりたいなというのが、てならい堂の野望です。

そのためにはまず触ってみるところから。少しハードルを感じる漆器を貸し出すサービスや、拭き漆を実際にやってみるワークショップなどもご用意しています。

拭き漆のワークショップはあいにくと満席ですが、今後も開催する予定なので、ひとまずは記事だけでものぞいてみだくださいね。

■ 【レンタル】輪島キリモトの漆器、借りて、触って、使ってみませんか?

■ 【てならい】漆のお皿を自分で仕上げる。初めての拭き漆ワークショップ

手づくりのほうきを育てる

静かに掃除ができる、すみまできれいにほこりを払い落とせる。でも…とにかく見た目がかわいい!

柄の種類、用途ごとに違う箒のサイズ感、箒を編み込む糸の色などでだいぶ雰囲気変わりますが、どれも可愛くてつい手にとりたくなってしまいます。そのおかげで掃除が進むとか(笑)。

箒を使い込んでいると、段々と穂先が曲がってきます。これをつくり手の小林さんに相談したら、意外な答えが返ってきました。

「穂先が曲がるということは、それはその人の掃き方の癖があるということ。実は、その人にとって掃きやすい形になっているってことですよ」

なんと!その道具を使い込むことで、相棒度を増していたってことなんですね。自分の形が段々とうつし出される。これも、育てる道具の醍醐味ですね。

もちろんどうしても気になる場合は、先っちょをハサミで切ってもOK。けど、自然素材のほうきは使い込むほどに、毛先が自然と削れてきます。そして根元に行くほど硬くなってきます。

昔はまず畳でおろして、硬くなってきたら今度は板の間に、次は土間にと使う場所を変えながらずっと使い続けたそうですよ。そんな移ろいにも憧れちゃいますねー。

てならい堂では神奈川の中津箒さんの箒を神楽坂のお店とWEBで販売しています。毎年、自分で作る箒ワークショップも開催していますので、次回をお楽しみに。この記事では今年4月の販売会の様子をご紹介していますので、ぜひご覧ください。

■ 【てならい後記】洋服にも机でも使える小ぼうきを作るワークショップ。ほうきのある生活入門編。

■ 【かいもの】中津箒いろいろ。販売しています。


3)育てる道具について考えてみる(てならい365日のススメ)

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いかがでしたか。木のスプーン、漆器、手づくりほうきをご紹介しましたが、もちろん育てる道具ってまだまだ色々あると思います。みなさんも一度、自分の生活の育てる道具について考えてみませんか?きっと意外な発見があると思いますよ。

てならい堂では、そうやって自分の生活を見つめ直してみる機会を、てならい365日と名付け、皆さんにオススメしています。会場は自宅ですし、参加者は今日はおひとりですけれども、これだってひとつのワークショップと言えると思います。

やり方は簡単。ノートを用意して、テーマについて書き出してみる、以上です。けれど騙されたと思って書いてみてください。書き出された文字を見ていると不思議と次々と新しい考えが思い浮かぶものです。

そうやって自分の考えを進めていくことが、自分にとっての「こころよい生活」を見つけることにつながると思うんです。そして、はっ!とした気づきがあったら、ぜひてならい堂に共有してください。メールでもいいですし、てならいに参加した時や、ひみつの小店に来た時に、そっとスタッフへ教えてください。

もしかすると同じワークショップに参加した人も、実は自宅でてならい365日に取り組んでいる仲間で、お互いに共感できるかもしれませんよ。

よーし、ちょっと考えてみようかな。と思ったあなた。今回は、「育てる道具をつかってみる」を考えるにあたり、まずは2つのことを考えてみてはどうでしょうか。

①探してみよう:
あなたの生活でこれまで育ててきた道具ってどんなものがありますか。一度身の回りの道具を見直してみましょう。

②考えてみよう:
あなたの生活に迎え入れたい育てる道具ってどんなものがありますか。考えてみましょう。

どんなことでも結構です。まずはノートに書き出してみてください。どんなノートでも構いません。構いませんが、形から入りたいという方(笑)向けに、てならい365日専用ノートもありますよ。

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さて、色々と育てる道具についてご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。

今年のてならい堂の夏のテーマですので、8月9月もまた、「育てる道具」について新しい話題や機会をご提案しようと思っています。今後、てならいの参加者募集とともに、てならい便り(メルマガ)にて随時このテーマについてご案内していきますので、まだの方はぜひこちらからをご登録くださいね。

「こんなことも知りたいよ」みたいなご要望あれば遠慮なくお問い合わせフォームやメルマガにご返信ください。

今月も皆さまのご参加をお待ちしています。てならいの会場で、神楽坂(ひみつの小店)で、色々とお話ししましょう。

育てる道具を迎え入れる
毎日大切に使って
自分の形になる
使うほどに生活に馴染んで
自分が滲んでいく