こんにちは。てならいのタネシリーズ、第7の公開です。

数回にわたり、道具についていただいた質問やその魅力について、つくり手さんから伺ったお話を交えてご紹介していきます。

 突然ですが、皆さん、割れてしまったお皿や欠けてしまったコップ、どうしていますか?

捨ててしまって、新しいものを買ってしまうなぁ・・・という方もいるかと思いますが、長く使って愛着のあるものや大切なものはできれば修理してつかっていきたいものですよね。(とはいえ、接着剤で直すのはどうなのかな・・・?と不安もあると思います。)

そんな壊れてしまったお皿やコップ、器などを素敵に変身することができる”金継ぎ”という修理方法があることを皆さんご存知でしょうか?

言葉は知っているけれど、具体的にどんな方法なのか知らない・・・という方も多いかと思います。

”金継ぎ”と聞くと、金を主に使って修理していくのかな?と思ってしまいますが、実は”漆”が大事な役割となってくるのです。

 

そこで今回、てならい堂で、初めて金継ぎを学ぶ方向けにプロから本物の”金継ぎ”をしっかり学ぶことができる「金継ぎ教室」や、気軽に”金継ぎ”の器に触れることのできる「金継ぎの修理」でご協力いただいている梅澤さんに”金継ぎ”について、詳しいお話や質問にお応えいただきました。

金継ぎの方法だけでなく、使用する材料である”漆”についてやメリットについてもご紹介いただいているので、金継ぎをご存知の方も、初めて聞いた!という方も、より”金継ぎ”への理解を深める機会になったら嬉しいです。

 

素敵な笑顔でお話いただいた梅澤さん

 
 

■金継ぎについて

金継ぎとは、割れたり欠けたり、壊れた陶磁器を漆で直す技術のことを言います。

直した部分を金でお化粧してあげることが、金継ぎといわれる所以となっています。

※接着作業や穴埋め、塗りに合成樹脂などの接着剤を使用した”簡易金継ぎ”(現代風金継ぎ)と言われるものもありますが、今回は漆をつかう金継ぎをメインにご紹介させて頂きます。

大きな作業工程は、

欠けた部分を補っていく作業・割れた部分を接着する作業→破損部分に漆を塗り重ねていく作業→金属粉などによる仕上げ作業の3つの流れ。

欠けた部分を補っていく作業で登場するのが、砥の粉(とのこ)という、細かい石の粒子と漆を混ぜ合わせて作った「錆(さび)」というペースト。 麻の繊維を細かくした刻苧綿と、米糊と、漆を混ぜ合わせて作った「刻苧(こくそ)」という粘土状のもの。 この2つを用いて欠けた部分を埋めていきます。 また、割れた部分を接着するのに登場するのが、米糊を漆と混ぜ合わせた「糊漆」です。こちらは天然素材の接着剤なのです。

形が接着してもとに戻って、欠けたものも埋まって元通りの形ができあがっていくと、破損部分に漆を塗り重ねていく作業に移ります。(金継ぎ教室では2回中塗りを行っています!)

漆を塗り重ねて丈夫になり、見た目(肌合い)がだんだん整ってキレイになっていったら最後に金属の粉を、漆を塗った上から漆が乾かない内に蒔きつけて仕上げをしていきます。(金属仕上げをしない場合もあるので、漆を塗り重ねただけで仕上げる方法もあります。) 

 
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★小種ばなし 〜漆の色って何色?〜
 
 
木から掻き採ったばかりの漆の色は乳白色で、空気に触れるとだんだん茶色に変色します。
生の漆は、下地の土台作りなどに使用します。塗り重ねに使用する漆は、精製漆といって、生の漆を日光などに当ててじんわり温めながら撹拌し続けることで、水分量を調節し、成分を均一にしています。
色でいうと、ベッコウ飴のような、ちょっと透き通った茶色になっていきます。
 
そこに顔料をいれて、赤くしたり、白くしたり(実際はベージュのような発色)酸化鉄で化学変化させて黒くしたりして漆に色をつけていきます。
  
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顔料などで色のついた漆は”色漆”と呼ばれるもので、「金継ぎ」では、塗り重ねるだけでなく、金属粉を蒔かずに”色漆”だけで仕上げる方法もあります。 漆屋さんで、生漆や色漆などさまざまな種類の漆がチューブで販売しているので手に入りやすいです!都内にも数店舗漆屋さんがあるので、ご興味あれば足を運んでみて下さい!
 

 

Q.金継ぎっていつからあるの?

A.金継ぎが盛んになったのが室町時代の茶の湯文化の頃。

壊れた器の破損部に金を蒔き付けてできた模様を「景色」に見立てて嗜んでいたようです。日本人特有のわびさびの美意識ですね。

そのスタイルが今も継承されているのですが、もともとは縄文時代の器からも漆でなおしたあとが見つかっているんです。縄文人は漆を接着剤とみなしていたということがすごい、ロマンを感じますね◎

でも、個人的にはあの頃の人は何で塗ったんだろうとか、すごいソッチのほうが気になっちゃって笑

絶対かぶれただろうなーって。

それでもやっぱり結構出土されているみたいで、直したものだけじゃなくて、塗ってあったりとか。

縄文からこうやって続いてきたものっていうのがちょっとグッときちゃいます。笑

 

Q.漆をつかった金継ぎで修理することの魅力って何?

A.接着剤で修理する方法と大きく違うのは、天然の素材を使っていること。

どっちもメリット・デメリットは多分あって、漆の良さは天然素材なので食器としてまた後で使うことができます。やり直しも作業的にしやすい点もメリットですね。

やっぱり直したあとのことを考えると、体に優しいものを使っている方が長く大事に使えるかな−と思います。大事なお皿とか器とか花瓶とか、そういうものほど長く使っていきたいと思うので、天然の素材で直すのがいいかなと思います。まぁ、時間とお金はかかってしまいますけど・・・(笑)

漆を使用した金継ぎで直すことは確かに時間もお金もかかってしまい、接着剤の方が手軽に直すことはできますが、お客様が何を大切にして選ぶかが大事になってくるかもしれませんね。

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Q.なんで時間がかかるの?

A.漆の乾燥、特に接着のときに一番時間がかかります。

接着剤であれば、水分が飛んでいくことで乾燥して乾くようなイメージなんですけど、漆は湿度が重要で、漆の中の成分と空気中の水分が結びついて硬化するんです。

漆の金継ぎで一番時間がかかる接着の工程では、塗った糊漆が接着面をぴったり合わせることで密閉に近い状態になるので、漆が呼吸しづらい状態になります。 なので普通に塗った漆よりも硬化時間がかかってしまいます。気候にもよりますが2週間〜1ヶ月乾くまで待ってあげる必要があります。

漆は気候や季節にすごく敏感。夏はジメジメして温かいので乾きやすいんですが、冬だと寒くて乾燥するので、接着の場合、一ヶ月ぐらいかかってしまいます。


 
★小種ばなし 〜漆は生きもの〜
 
漆がよく固まる状態は、湿度が70%前後で温度が20~30℃。
乾燥している時期には、部屋自体も温めてあげたり、漆風呂(直したものを乾かすためにいれている箱)に霧吹きをかけたり、毎日お世話してあげることも大事です。
 

 

Q.どんな器が金継ぎに合うの?

A.適しているというか、漆と相性がいいのは土でできた器や陶器。けっこう土!って感じの焼き物ですね。

例えば、陶器の割れた断面って、ザラザラで、ゴツゴツしていて、漆がどんどん吸い込まれていくのですごく相性がいいですね。

逆に、高級なティーカップみたいな磁器って、割れた断面をみるとガラスに近い質感なんです。また、作りも薄いものが多いので、接着面も少なくなって漆が吸収されにくいんです。

やっぱり陶器と磁器で比べると、金継ぎした器が後で取れやすいことはありますね。

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梅澤さんへのインタビューはまだまだ続くのですが、長くなってしまいましたので、今回はこの辺で。

次週、金継ぎ教室に関するお話や、梅澤さん自身の漆・金継ぎとの出会いについてのお話などをご紹介させていただきます!お楽しみに!

てならい堂では、本漆をつかった本格的な金継ぎを楽しんでいただくための道具がすべて揃った「金継ぎキット」も販売しております。ご興味お持ちの方はぜひこちらもご覧になってみてくださいね。