コンバサターという仕事を聞いたことがある人は稀だと思います。

それは美術品を修復し、次の世代につなぐ仕事。普通に生活している私たちには縁遠い仕事かもしれません。

そのレアなコンバサターから、実際の仕事内容を聞き、「修復の仕事」を体感してみるワークショップです。

「直す」という行為が、アートの世界と生活で、一体どう違うのか。

その違いに触れることで、私たちの生活に何がもたらされるのか、なんて。

夏の大人の自由研究。もちろんお子さんも歓迎です。

美術品を修復するという、なんともレアなお仕事に興味津々です。 ©small museum

美術品を修復するという仕事を体感するワークショップ

コンサバターという仕事を、聞いたことはあるでしょうか。それは美術品の修復を担うお仕事です。

初めて耳にした職業でしたが、てならい堂として、なぜかとても惹かれるものがありました。「直す」ということ。それも、古いもの、価値あるものを直すということには、きっといろんなことが含まれているんじゃないか、と。

今回のワークショップでは、「のこす、なおすって、どういうこと?」を、美術品の保存修復という仕事を入り口にして考えてみたいと思います。目的地は、案外、私たち自身の暮らしの見つめ直しかもしれません。

教えてくれるのは、森尾さゆりさん。

ロンドンでアートを学んだのち、ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)の彫刻修復室で約2年間勤務した、その道のプロフェッショナルです。

立体造形物を専門とする森尾さんの仕事は、石彫刻や建築物、石膏、ガラス、木などなど、扱うジャンルも素材も多岐にわたるそうです。

まずは少し縁遠いようで、実はぐっと引き込まれる「コンサバター」という仕事について、スライドを交えながら教えてもらいます。

コンサバターの視点を教わったら、次は自分たちの「なりきり」体験の時間です。

手を動かして、クリーニングに使う綿棒を自分でつくり、森尾さんお手製のアートピースを実際にクリーニングしてみます。

何を残して、何を取り除くのか。どこまで綺麗にすればいいのか。何気ない作業のはずなのに、そこには自分自身の判断が問われる瞬間が訪れるはずです。

最後は、感じたことを自由に話す時間。そこで、自分たちの生活との接点を探してみたいと思います。

自分で作業したアートピースは、お土産に持ち帰っていただけます。それ以外に何を持ち帰れるかは、参加されるみなさん次第。でも、いつもとちょっと違う視点に気づくワークショップになることだけは、間違いないと思っています。

手製の綿棒で、アートピースのクリーニング(のようなこと)を体験してみましょう。森尾さんに準備いただくピースが、どんなものになるかは当日のお楽しみ。

 

日本人だから感じる西洋の修復と日本の修復

教えてくれる森尾さん、聞けば聞くほどすごい人です。

ロンドンでガラスアートを学んだのち、モザイク工房での勤務を経て、大英博物館の修復現場に出会ったことが、コンサバターを志すきっかけだったそうです。

美術学校で学び直したのち、ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)彫刻修復室で約2年間勤務。帰国後は東京国立博物館を経て、現在は東京藝術大学 保存修復彫刻研究室で働きながら、フリーランスのコンサバターとしても活動されています。

美術品の修復という仕事を、もっと広く知ってもらいたい。そんな思いから、一般向けのワークショップにも力を入れていて、子どもから高校生まで、幅広い層に修復という仕事の視点を届けているのだそうです。

仕事を続ける中で、森尾さんは日本と西洋、修復に対する考え方の違いも感じてきたといいます。

たとえば、日本で活動する今、仏像の修復に携わることも多いそうですが、日本では仏像が変化し、劣化していく過程そのものも含めて、見せていく姿勢があるといいます。

一方でヨーロッパには、「変化」を作品の背景として自然に受け止める概念があまりなく、むしろ「変化してはいけないもの」として扱われる傾向がある。そこに、日本との違いを感じてきた、というお話を伺いました。

直すということに対するこうした価値観の違いは、そのまま、私たち自身の自然観を考えることにもつながっていく気がします。

てならい堂では、金継ぎやダーニングも人気の講座です。そもそもダーニングは西洋の家庭技術ですが、その精神性は、日本の刺し子やぼろにも通じるところがあると思い、てならい堂でも早くから積極的に扱ってきました。

もちろん、これらは生活の道具を直すことであって、美術品の修復とは根本的に違います。違うのだけど、同じ「直す」という営みだから、きっと参考になるはず。何が同じで、何が違うのか。それを知りたくなりました。

答えのあることではありません。でも、だからこそ、一緒に考えてみませんか。

修復に取り組む森尾さん。なんの作業かは、わかりません。笑

修復の道具いろいろ。こんなの使いこなせたらかっこよいですよね。

夏の終わりの大人の自由研究

金継ぎもダーニングも、直す人の解釈がそこに入り込む。表現の前に、まず解釈することがアートの始まりであるならば、直すこと自体も、アートの一部なんじゃないかとも思います。

であるならば生活道具を直すことも、ひいては生活そのものも、アートと呼べるのかもしれません。

「最小限の介入」や「可逆性」といった、保存修復の世界のキーワードから、「自然な素材を使うこと」を大切にしている私たちは、一体何を「自然」だと思っているのかが見えるかもしれないと、森尾さんは話します。

油断していると、自分で考える機会をいつのまにか奪われがちな今の社会の中で、体験を通じて自分たちの判断軸を取り戻していくこと。それは、てならい堂の活動テーマのひとつでもあります。

そして、私たちの生活は、何を大切にしているのか。今回のワークショップが、そんなことを考えるきっかけになれば、面白いなと思っています。

夏の終わりに、大人の自由研究を。もちろん、お子さんの参加も歓迎です!

汚れを落とすことも修復の一部。汚れ、ってなんでしょうね?