桜の花がそろそろ満開を迎えるこの季節、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

今年も、染の里おちあいさんにて、桜染め体験を行いました。
今回参加していただいたのは、4名様。
皆さん染めはあまりしたことがないとのことでしたが、説明に従って順調に布を染めてゆき、とてもきれいに桜色のストールができあがりました。桜染めと共に工房の様子や職人さんのお話を楽しみました。
当日の様子や教えていただいたお話の一部をお伝えします。

桜染めは、藍染めなどと同様、自然の材料をつかって染める「草木染め」です。草木染めで染める布には、天然繊維のものを選びます。天然繊維には、動物繊維と植物繊維があり、タンパク質でできている動物繊維(シルクやウール)が最も染まりやすいそうです。セルロースでできている植物繊維(木綿や麻など)は、下処理をしてからでないと染まりにくいということでした。

おちあいさんでは、毎回タイシルクの布を仕入れていたのですが、新型コロナウィルスの影響でいつもの布が手に入りにくくなっているとのことでした。新型コロナウィルスの影響により世界が変わっていっていることを、改めてものづくりの現場の声から感じました。
今回は、シルクと木綿を使った織りのデザインが素敵な布を準備していただきました。

シルク×木綿の布なので、木綿にタンパク質を含ませる下処理を行います。
昔ながらの方法では、呉汁(ごじる:大豆を砕いて漉したもの)を使ってタンパク質を添加するのですが、柔軟剤でも代用できるとのことでした。これなら家でもできそう。

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下処理をしたら、いよいよ布を染めていきます。
尚、染めにつかう染め液は、おちあいさんが準備してくれています。
染め液は、枝をぐつぐつ煮て桜色の色素を1日かけて煮出していきます。1回目に煮出した液と、5回目に煮出した液では色が違うそうで、全部で5、6回煮出して、最後に色を調整するために混ぜ合わせて使うということでした。

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上が煮出す前の枝。(例年通り、長野恵那市の桜の樹です。)下は煮出したあと。こんなに深い茶色になるのです。枝から色素がとれるということも、驚きです。
桜の色素は、アントシアニンという、ブルーベリーで有名なあの目にいい色素だそうです。参加者の方がさらに調べてくださり、アントシアニンはポリフェノールの一種ということを知りました。ワインやチョコレートに入っているあれですね。

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枝を煮出すときも80度ほどを保ちながら煮出すとのことでしたが、染める際も染め液の温度を70〜80度に保って布をぐつぐつ煮ながら染めていきます。
10分ぐつぐつ(1回目染め)→15分媒染液に浸す(色を定着させる)→10分ぐつぐつ(2回目の染め)
一回だとまだ色は薄いので、今回は2回染めました。また、お好みで3回染めた方もいました。

染めのあとは、水で洗い流してからしぼって干します。
花曇りの空のもと、桜色がはためいています。そして、工房脇の川沿いに立つ桜の樹たちが、満開でした。なんとも桜染め日和な日です。

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干している間、工房内を案内してもらいながら染めについてのお話を伺いました。型染めや流し染めなど染めに関する道具や作り方、歴史などを聞きます。職人さんの現場は、知らないことばかりで何回来ても新しい発見があり、本当に興味深く楽しいです。

今回の参加者の皆様の間で、なんかかわいいね。とちょっとした注目を浴びたのが、こちら、丸バケ。しかし、こちらも作り手の方の高齢化や後継者不足などで、どんどん作っているところがなくなっているとのことです。昔ながらの素晴らしい道具や技術をどうしたら残したり伝えたりしていけるのか、毎回現場を見るたびに考えます。

そうこうしているうちに、布が乾きました。
今回講師をしていただいた中山さんから、少し歩いて神田川の方に行くと川沿いの桜が満開できれいですよと、桜の穴場スポットを教えていただきました。今回ご参加の皆様、染めたてのストールをまとってお花見をしながら帰られた方もいらっしゃるでしょうか。

今年1回目の桜染めは、満開の桜とともに無事終了。
今年の桜も終わりか、染めたかったな…という方ご安心ください。4月24日(日)に第2回の桜染め体験を予定しています。(染め液は一年ほどたっても大丈夫なくらいもつようです。)
春の名残を惜しみながら、来年のお花見に思いを馳せつつ桜色のストールを作ってみませんか。
ご興味のある方は、こちらをご覧いただけたらと思います。

お申込み・詳細はこちらからどうぞ→季節の草木で染める、ストールの桜染め体験。4月