こんにちは。
てならい堂スタッフの五十嵐です。

鍛冶屋さんの工房で、熱い鉄を叩いてフライパンを鍛造する体験——。そんな非日常を味わうワークショップが、埼玉県狭山市にある鍛冶屋さんの工房で行われました。

 

教えてくれるのは、Metal NEKOの金子さん。今回参加してくれた2名の方々は、ともに鉄のフライパンを愛用しているそうで、「楽しみすぎて眠れませんでした~」という方も。(笑)
ぜひ思う存分、鉄の世界を楽しんでくださいね。金子さん、よろしくお願いします!

渋くてかっこいいフライパン!

金子さんのフライパンは、打ち鍛えられた鉄肌や、一枚鉄によるなめらかなフォルムがなんとも美しいのですが、その原型は薄いラケットのような形をしています。シルバー色の表面はつるっとすべすべ。かっこいいフライパンとは正反対の、ちょっと頼りない印象なんですが、「これはかなり鍛えがいがある!」ともいえますね。(笑)

作業に入る前に、まずは金子さんからの説明をしっかりと聞きます。

赤く熱した鉄の表面には、黒さびとも呼ばれる酸化鉄の層ができます。この層はきわめて薄く、ハンマーで表面を叩いたときに粉々に剥がれ落ちます。この剥がれた被膜が目に入らないよう、ゴーグルは必須です。また、マスクやエプロン、耐熱手袋などもしっかりと装備しました。

準備が整ったら、いよいよ作業のはじまりです!
刻印ができるということで、まずはお好きな文字を打ってもらいました。 本日最初の「鉄を槌で打つ」作業。とても楽しそうなお二人でした。

力加減が難しいのですが、ちゃんと刻印されましたよ。

愛犬のお名前の刻印。とってもおしゃれです。

おしゃれな刻印が完成したら、いよいよフライパンの原型を燃えさかる炎の中へ。
金子さんが燃料をかき混ぜるたびに、火の粉が勢いよく舞い上がります。フライパンを投入してほんの数分、一部分が真っ赤になってきました。

大迫力の炎。いつまででも見ていられます……。

炉にくべられた燃料はオガ炭。Metal NEKOさんでは、温室効果ガス削減への取り組みとして、オガ炭や木炭などの燃料の割合を増やしているのだそう。

植物から作られた燃料を燃やすとCO₂が放出されます。でも、植物はCO₂を吸収しながら成長するので、大気中のCO₂の総量には影響を与えないとされています。このようなカーボンニュートラルの観点から、使用する燃料を選んでいるのだそうです。

「燃料を使わない、CO₂を排出させない、という選択はできませんから。いかにうまく消費していくかを考えないといけないですね。自分も子どもがいますし、若い人たちのためにも、小さな工房ではありますが、できることを実現していきたいですね。」

と、ほがらかに語る金子さん。少し先の未来を見据えながら、職人として鉄に真摯に向き合う金子さんの実直なお人柄が、このフライパンに表れているように感じました。

 

さてさて、炉に入れられたフライパンはどうなったでしょうか。

溶岩のように赤くなっています!

金子さんに叩き方のお手本を見せてもらいます。

金子さんにお手本を見せてもらってから、さっそくお二人にも叩いてもらいました。

叩くたびに、黒い酸化被膜が現れては剥がれ落ちます。これを繰り返すことで、あの独特な鉄肌ができてくるんですね。 鉄を叩くというはじめての経験に、お二人の緊張感が伝わってきます……。
でも、”振り上げたハンマーを力を入れずにすとんと落とすように”という金子さんのアドバイスを実践していくと、叩く音はリズミカルに、鉄の外側は緩やかなカーブを描くように曲がっていきます。
「楽しいです~!たしかに、そんなに力はいれなくても大丈夫なんですね。」と、しばし熱い鉄を叩くことに没頭していたお二人でした。

はじめはおそるおそる……。でも、次第に職人さんのように叩いていました!

午前中までにここまで進みました!すでにフライパンになってますね。

お昼休憩をはさみ、午後も叩く作業からはじまります。 ただし、ひたすら叩くというよりも、全体のバランスを見ながら調整する作業が増えてきました。

持ち手の部分は蜂の巣のような型の上で成型します。いったいどうやったら鉄がこんなに細くきれいに曲がるのかと思いましたが、型や土台を変えながら、少しずつ叩いて仕上げていくんですね。
さらに、このフライパンの特徴でもある、持ち手の先端が少し広がったようなデザインも美しく再現されましたよ。

細いカーブをつけるために、型の上で叩きます。

少しずつ慎重に叩いた持ち手部分は、美しい筒状になりました。

最後にカーブの立ち上がり方や持ち手の角度など、金子さんと一緒に確認しながら微調整を行い、本日のワークショップは終了となりました。
油の焼き付けなどの最終的な仕上げを金子さんにしてもらったあと、このフライパンはお二人のもとへと向かいます!

丁寧に鍛造し、ここまで仕上がりました!すてきなフライパンの誕生です。

 

この日のお昼休み、みなさんといろいろお話ししたのですが、話題のひとつとなったのが「道具」について。
「鉄のフライパンを使うようになってから、フライパンが使いたくて自炊が増えたんです!」という参加者さん。また、「なかなか日記が続かなかったんですが、高価な万年筆を買ったら、万年筆が使いたくて続くようになったんですよ。」という文房具にまつわるお話も。

いい道具とは、長く使い続けることで、使い手の日常を無理なく、ゆっくりと豊かにしていくものだと、みなさんとお話ししてあらためて実感しました。

この日誕生した「自分で作ったフライパン」というあらたな道具が、お二人の日々の暮らしをさらに豊かにするものとなってくれたらとてもうれしいです。

ご参加いただき、ありがとうございました!
そして教えてくれた金子さん、ありがとうございました!