こんにちは。にっぽん てならい堂店主の中村です。

本日は、深める金継ぎと初めての蒔絵教室(欠け編)の最終回です。4ヶ月にわたって取り組んできた金継ぎの器がついに完成する日です。

一昨日は東京も雪混じりでしたが、今日はスッキリ晴れて穏やかな気候。卒業式(金継ぎ教室のね)にはもってこいの日となりましたね。ということで張り切ってスタート。

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年末から教室の仲間に加わったピーちゃん。癒しをありがとう。

今日の工程は、金継ぎを研いで仕上げる工程。蒔絵のブローチは前回で研いで仕上げてますので、その経験を活かして、今日は本番、金継ぎの器にむかいます。

前回までの作業では、欠けた部分に下地を作って以降、塗り重ねてきた漆の上に金粉もしくは錫粉を蒔き、これをしっかりと固定するために、漆を薄く塗りました。

小さな球体である金属粉の土台の部分は、漆が接着剤としての側面を発揮してしっかりと固定してくれていますが、上に塗られた漆は、このままでは金属の光を閉じ込めてしまうので、この上の部分を研ぎ出していきます。

蒔絵のブローチでの前回の予習と同様に、スポンジやすり、コンパウンド、磨き粉と3種類の研磨の材料を使って粗いものから徐々に細かいものを使って、綺麗に研ぎ上げていきます。最初のスポンジやすりで仕上げすぎてしまうと、その後の研磨でせっかくの金属を突き破ってしまいますので、やりすぎないように注意が必要です。

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コンパウンドと磨き粉は指につけて、磨いていきます。

ちなみに今回はスポンジやすりを使ってますが、本来は炭を使うそう。その方が綺麗に研げるからです。けれど自然素材である炭は個体差が大きく、良いものに出会えば最高の研ぎ加減になりますが、ほとんどのものはそうでもなくて、全く研げないものもあるそうで。

今回は、工芸家としての質を突き詰めることが目的ではないので、より安定感のあるスポンジやすりを使います。世の中の技術が発展して、漆の仕事に使う道具も様々な進化系が世に出ています。行庵先生は、こうした道具をその人のレベルや、目的に応じてうまく使い分けています。

一方で漆そのものについても、技術の進化により用途に応じて混ぜ物をしたものも世に出ていますが、これについては「性質が変わってしまう。漆は漆であるべきと考えます」ということで、一線を画してらっしゃいます。

何を守り、何を変えるのか。これは歴史や伝統を重んじる工芸の世界では重要なテーマですが、ふと、私たちの生活においてはどうだろうと思いました。あまり意識されるテーマではないかもしれませんが、けれども生活においても、意識していた方がいいこともあるのではないか、そんなことを感じたんです。

教室は静寂の中、先生がぐるぐると回ってこまめに磨き具合をチェック。今日は先生、大回転です。

教室は静寂の中、先生がぐるぐると回ってこまめに磨き具合をチェック。今日は先生、大回転です。

さて、作業を進めていくと、あんなに気をつけているのに研ぎ破ってしまうことも。要因としては、やはり下地がでこぼこしていると、その分出っ張りが出来るわけで、等しく磨いていると、出っ張ってるところを削りすぎてしまうんですね。兎にも角にも下地が大事ということが、ここで皆さん身をもって感じられるところです。

けれども、教室に通う最大の強みは、自分で仕上げたものは、後から自分で直せることだと行庵先生は説きます。金継ぎは永久的なものではありません。使ううちにはげてきて、やがて下地が見えてしまうでしょう。そうなったとしても、再度仕上げ直せばいい。下地はできているので、上の部分だけ直せばいいそうです。

また仕上げ直す際に、下地も再度研がれますから、さらに滑らかな仕上げになるとのこと。そうやって、自分で育て続けられのも、金継ぎの更なる魅力ですね。

こちら、研ぎ破ってしまいました。けれど失敗こそ貴重な経験。こうやって感覚が身につくはず。この器は次回、再度仕上げ直すことになりました。

こちら、研ぎ破ってしまいました。けれど失敗こそ貴重な経験。こうやって感覚が身につくはず。この器は次回、再度仕上げ直すことになりました。

こうして皆さんの欠けた器への金継ぎがついに完成。金の輝き、錫の輝きが器に絶妙なアクセントを与え、固有の物語を纏った器として生まれ変わりました。

最後に、行庵先生と話す中で、こうおっしゃってました。「皆さんが工芸を継ぐのではない。けれども皆さんには知っていて欲しい。皆さんが知っているだけで、続くもの、続いていけるものがあるんです。」

今回の一連の教室で、金継ぎから蒔絵に踏み込んだことで、また一つ私たちもちゃんと知る機会に出会うことができました。この機会が巡り巡って、私たちの生活を続けていくことにつながりますように。4ヶ月ご参加いただいた皆さん、行庵先生ありがとうございました。

次回、割れた器編も楽しみです。

こちらは錫仕上げ。ピカりんと輝いてます。錫は使っていくうちの、経年変化も楽しみです。

こちらは錫仕上げ。ピカりんと輝いてます。錫は使っていくうちの、経年変化も楽しみです。