【てならい後記】深める金継ぎと初めての蒔絵教室(欠け編・割れ編)22年春。第6回
こんにちは。てならい堂スタッフの松本です。
肌寒い朝。いつ雨が降り出してもおかしくない空模様。この季節の漆は、イキイキとして漆が乾きやすい時期。日本の風土に根付いてきただけあり最適な湿度と温度を好むんですね。
第六回目の今日は、「粉固め」です。
粉蒔きで器に残った余分な粉を取り除き、金属粉の上にもう一度、漆を塗りこめていきます。均一に漆を塗ることはかなり難しい作業…。そこで、教室では薄く塗った漆をティッシュで軽く押さえていきます。
まずは、漆が乾いた状態か確認するところから。
漆の乾き具合を知る方法として、粉蒔きした器とティッシュに同じ漆を染み込ませておき、一緒に漆風呂の中に入れて確認する方法や、釉薬がしっかり掛かった器であれば、一本余分な線を引いて粉蒔きをしてその余分なところを竹串で削ってみてカリカリと引っかかる状態であれば乾いていると判断する方法の2つを教えていただきました。
【欠け編】器とブローチの余分な粉を払い、黒漆で地塗りをする。
余分な粉を毛棒で払った後、ティッシュで粉を取り、釉薬がしっかりかかっている器は、ホワイトガソリンをつけてさらに綺麗に取ります。
ブローチも余分な錫粉を取っておきます。
改めて消粉と丸粉の違いと研ぎに適しているかを説明してもらいました。「消粉は真綿で蒔きながら研ぐのでそのまま仕上がるけれど、摩耗には弱い。それぞれの粉には、それぞれの蒔き方と留め方がある。それを知っておく事で最適な仕上げを判断することができる」と行庵先生。
4号粉を蒔いた粉固めの地塗りは、とにかく黒漆を薄く塗ることが大切。そして塗り残しだけは無いように!少し厚めに塗ってしまってもティッシュで押さえて薄く均一に漆が塗れた状態を目指します。
もちろん、職人さんはティッシュで押さえたりしませんが、少しやり方を簡略化をしても、「本流を知る」ことの大切さ。そこには理解の上に成り立つ、“平蒔絵の金継ぎ”をきちんと知ってほしいという行庵先生の思いが込められています。
先生に「ティッシュ使っていいですからね」と言われるほど、生徒さんは薄く均一に塗る作業に真剣に取り組まれていて「薄く塗る魂」が感じられました!
さらに、「薄く塗るより均一に塗ることのほうが難しい」という気づきを経験により感覚で分かるようになり、成長をご自身でも感じられたようでした。薄く塗れることが嬉しくなってきたとおっしゃる方も!
同じくブローチにも黒漆で粉固めを施し、ティッシュオフしたら、綺麗な型が現れました♪
欠け編の作業はここまで。
【割れ編】器の余分な粉を払い、黒漆で地塗りをする。ブローチはやすりで水研ぎする。
丸粉を蒔いた後、球体の粉の上に漆を塗り重ねること、これが「粉固め」。それを半球の状態に研ぎ出し仕上げる工程を図解で教えてもらい、理解を深める皆さん。
欠け編と同様に、毛棒で余分な粉を払います。
粉固めの後だと格段に取れにくくなるので、今のうちに綺麗にしておきましょう。
少し厚めに塗っても大丈夫なので、塗り残しだけは無いように!ティッシュで押さえる時はきれいに畳んで面を変えながら2〜3回軽く押さえると良いそう。
一足先に完成した蒔絵のマグカップと螺鈿+金箔押しのブローチ。
螺鈿のブローチの方は、前回塗り込めた黒漆を水研ぎしていきます。
スポンジやすり→ペーパーやすり→デザインナイフで整えて、再度スポンジやすりで磨いたら、今日の作業は終了。
大切なのは、作業の積み重ね。1回ずつの作業が次の工程に続き、表れてきてしまう。。だからこそ、「下地だから見えないでしょ?」ではないんですね。 漆選び・季節・工程ごとの判断が必要なこと、時を経てこそ最後に得られる美しさ。そこが魅力なんだと感じます。
次回が最終回なんて信じられませんが、完成した金継ぎの器とブローチを早く見てみたいです!