昨晩のおはなし会、テーマは【ツクリ手のタニク学】。TOKIIROの近藤義展さんから多肉植物についてや、その育て方・コツを教えていただき、TOKIIROの活動についてを伺う……

という予定調和的な内容には全くならず、義展さん・そして参加した皆さんから聴かせていただいたのは、さまざまな、そして大きな“愛”のお話でした。

参加してくださった皆さんのお仕事が興味深く、旅のお手伝いをする人・樹木名を知る人・いたずら描きする人・絵本を届ける人・本をつくる人・困っている方の助っ人をする人…などなど。義展さんもおっしゃっていましたが「多肉植物が繋いでくれた縁」で、こうやって皆さんとてならい堂が出会えたことにまず感謝でした。

そんな皆さんに店主がまず質問した「“私”と“タニク”について聴かせてください。」という問いかけ。そこでは、癒してくれる存在・最近興味が出てきた相手・つかず離れずの関係・いまだ片思い中・出会ってしまった…と、アレ?これって恋愛についてのおはなし会だったっけ?と思ってしまう回答ばかりでした。

何より義展さん自身からも「愛!」という答え。タニクとは何の利害関係もないし、何かを求めたり欲したりもしない。何億年という長い年月をかけて生きるための知恵と進化を身につけてきた多肉植物に、自分がやってあげられることなんて何もない。ただただ愛をもらって愛を返している、そんな存在なのだそうです。

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そこからは、義展さんが多肉植物と出会った経緯、ハマった経緯、愛した経緯のお話に。

近藤夫妻がたまたま訪れた山梨県北杜市にある「八ヶ岳倶楽部」で購入した、柳生真吾さんの著書。そこに作り方が載っていた多肉リースを見よう見まねで作り、妻である友美さんにプレゼントしたところ、友美さんがキラキラした笑顔で喜んでくれたことがきっかけとなり、当時は流通も販売も少なかった多肉植物たちを買い集めてはリースや寄せ植えを作る日々。ここにも多肉植物が繋いでくれた、夫婦の“愛”があったのですね。

その後、屋号を「季色(トキイロ)」と定め、夫婦で本格的に活動を開始。出会った人たちに多肉植物の楽しさや愛らしさを伝えていきました。

そんな活動の中で飛び込んできた、柳生真吾さんの訃報。多肉植物を通し、憧れの存在だった真吾さんと深い交流を築いてきたTOKIIROにとって、その訃報はとても大きな衝撃と悲しみでした。真吾さんが残してきたこと、これからやっていきたかったことはなんだろう、と自分自身に問いかけていくなかで、義展さんやTOKIIROの活動・作品は一気に深度を増していくことに。「真吾さんの死が僕を覚醒させた。」と義展さんは言っていました。多肉植物の楽しさや愛らしさはもちろんですが、それ以上に、多肉植物のことやそれが育つ環境気候、地球のこと宇宙のことを考え、多肉植物を通してそれらを伝えていくことがTOKIIROの【使命】となったそうです。

その使命を持って創られるTOKIIROのアレンジメントは、友美さんの感性と基準で選ばれた美しい器と義展さんが奏でるストーリー性によって、いまや圧倒的な個性を放つ存在です。

そして先日は、柳生真吾さんが長らく進行を担当されていたNHK「趣味の園芸」に、多肉植物の講師として出演。そこにも多肉植物が繋いでくれた、必然の縁を感じずにはいられません。

 

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義展さんはこのようにもおしゃっていました。
「多肉植物を育て始め夢中になり始めると『枯らさないように。ダメにしないように。』と必死になるよね。僕も初めはそんなことばかりで失敗もたくさんしてきました。でも過去は変えられないし未来もどうなるか分からない。成功した人うまくいった人の本を読んで、それと同じようになぞらえたからといって、自分もそうなるとは限らないしね。だったら“今”に集中して、今、この多肉植物がどう在るべきなのか、失敗が何を伝えようとしているのかを考えたら、きっともっと違う視点で多肉植物や自分のこと、地球のことも捉えられるようになるんじゃないかと思います。だから僕は、多肉植物を上手に育てることにコミットはしていないんです。」

 

いくつかの質問ののち、店主が「今日のこのお話を聴いて、義展さんへ何か。」と最後の投げかけ。するとそこには参加した皆さんから義展さんへの、たくさんの愛あるメッセージが綴られていました。

そんな皆さんからの愛を受けて、最後に義展さんが即興で作ってくれた寄せ植え。そこには向かい風に吹かれてもすくっと立ち上がる、乙女心(というタニクです)がありました。

参加してくださった皆さんからは、「タニクのことを聴きにきたつもりが、今感じている悩みへのヒントを聴けたみたい。」「先日のワークショップ以来、タニクについて考えるようになった。そうしたらだんだん自分の生活や自分自身のことも気にかけるようになった。」などなどの言葉をいただけ、太古の昔から今を生きるタニクには皆の視点や意識も変えてしまう愛があるのだと、強く思いました。

皆さんのおかげでとても素敵な時間となりました。どうもありがとうございました。

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Guest speaker:TOKIIRO 近藤義展
Location:にっぽん てならい堂「ひみつの小店」
Special thanks:神楽坂(の小店)の中心で、タニクへの愛を叫んだ皆さま