プロの仕立て屋さんから学ぶ、和裁のココロ
和裁生活のススメ〜入門編は、運針から始まります
着物に興味を持つと、日本文化への入り口が一気に広がりますが、その中でも、針を持ちたくなる人は多いみたいですね。
ちょっとした小物を自分で縫えること、自分で直せることは、我ながらとても頼もしいこと。
シンプルな道具であっても、それが自分の手による物であれば、その愛着は格別。
好きな布を選んで、モクモクとチクチクするもよし、仲間を見つけて、ワイワイとチクチクするもよし。
モノづくりの楽しさも、上達する喜びも、そこにあるんです。
今回の教室で、仕立て屋さん達が何をおいても知って欲しいと願うのは、「運針に始まり、運針に終わる」とまで言われる和裁の基礎の基礎、その「運針」です。
職業和裁に必要なスピードを得る為だけでなく、着て柔らかく、解いて優しいその縫い目を実現する為に、必要な技術。
もちろん、身につけるには、地味で地道な鍛錬が必要なのですが、今回はプロの仕立て屋さんからプロの技を伝授してもらうチャンスです。
そして、その運針を学びつつ、製作するのは、あずま袋、名刺入れ、道中財布の、各回2時間程度で完成する、どれもシンプルな和雑貨3点。
全員必参加の初回で運針を学び、全3回に渡り、和雑貨を作りながら運針を練習していきます。
教室で習ったつくり方を、お土産についてくるキットを使って、おうちでも復習。
鬼とも言われた先生(笑)の指導をくぐり抜けてきた、プロの仕立て屋さんだからこそのサジ加減で、楽しくても、ラクチンだけの体験会ではなくて、3回+宿題を経て、教室が終わる頃には、しっかりと運針の基礎が身に付く様に、設計してもらいました。
和裁生活のこれぞ入門編、といった講座になりそうです。
プロの仕立て屋さんから学ぶ、和裁のココロ
普段着の9割以上が洋服となっても、七五三に始まり、成人式や卒業式、結婚式など節目の正装には和装を選ぶ、私たち日本人。
花火大会や夏祭りで浴衣を着られることにテンションが上がるのも、本当は普段着としても和服を取り入れたいという潜在的な欲求が残っているからかもしれません。
見た目も大きく違う、洋服と和服ですが、そもそもモノづくりに対する理念からして違います。
形とサイズに応じたパターンに沿って生地を裁断する洋服に対し、和服は一枚の反物を余すこと無く縫い合わせ、更にはほどいて縫い直し、使用者や用途を変えながら、ずっと使い続けるものでした。
「型にはめること」と「その場に合わせること」、「余分を切り捨てること」と「余すこと無く使い続けること」、色んな解釈があるとは思いますが、やっぱり外の文化と対比したときに際立つ、日本の心を感じずにはいられないのです。
そんな日本の和装を支えているのが、仕立て屋さん。
そもそも和服は何度も縫い直すことを前提としていますので、手縫いは後でほどき易く、また、ミシンの様に細かく強い針目では無いので、ほどいた際に針穴が目立ちません。
もちろん、手縫いならではのふんわりとした縫い上がりは、着心地にそのまま影響し、一流の仕立て屋さんによる着物は、体に吸い付くとも表現されるほどに、馴染むそうです。
着物の未来を考え続けるつくり手に習うからこそ見えてくる、日本人である私たちがもっと知った方がいいことが、きっとある様な気がしています。
仕立て屋ユニットが繫いでくれる家庭和裁
今回、和裁を教えてくれるのは、”ツヅクキモノ”という名で活動する30代が中心の仕立て屋ユニット。
「着物を続けよう」ということではなく、「着物は決して無くならない。続いて行く」という信念をユニット名に託した彼女達は、だからこそ、大好きな着物に触れる機会をもっと増やして欲しい、もっと気軽なものにしたいと願い、活動しています。
ともすると和裁教室のイメージは、やはりベテランの厳しー先生によるお稽古ごとといったイメージかもしれませんが、同世代から習うことで、自分たちの感性に合わせて、楽しく暮らしに取り入れられるというのは、貴重な機会ですよね。
どうしてもハードル高く感じてしまう着物の世界ですが、カワイイ生地を見つけて盛り上がったり、自作の小物を本当にさりげなく使いこなす彼女達と一緒に居ると、着物や和裁の世界も、ごくごく日常的な愉しみのひとつなんだなと、気付かされます。
そして、そんな着物文化をより身近なものとしていたのが、家庭和裁だったのではないでしょうか。
かつては、母から娘へ伝えられてきた家庭和裁。
今はそういう機会は極端に減ってしまっていますが、改めてその意味を、先生から生徒へ、あるいは友達から友達へ、そしてやっぱり母から娘へと、つなげていけたら、きっと楽しい生活が待ってると思うんです。
和裁を繋げる、和裁で繋がる生活を、あなたも体験してみませんか。