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前回の記事では、伊藤洋平さんが木工の仕事をはじめたきっかけ、そして八王子市で木工スクールをはじめるまでのいきさつをご紹介しました。今回は伊藤さんが、なぜ親子向けのワークショップを継続しているのか、そのあたりの話をお伝えします。

現在、5歳と1歳の2児の父でもある伊藤さん。ワークショップを通じて子どもたちに伝えたいのは「木工という仕事の存在」だそう。

「将来の仕事の選択肢って、子どものころの経験から生まれることが多いと思うんで。自分は大人になってから『こんな仕事があるんだ』と思うことがたくさんあって、自分がいままで狭い世界にいたんだ、ということに気づかされました。そのためにも、まず子どもたちの心に残るよう楽しいワークショップにしたいですね」

私が木工や建築の仕事に興味を持つようになったきっかけと同じで、幼いときに両親がのこぎりや小刀などを使う機会を与えてくれたから。だから、伊藤さんの考えにはとても共感できました。

でもなぜ、大人向けの木工スクールを運営している伊藤さんが親子向けのワークショップをはじめたのでしょうか。きっかけは八王子市内で毎年11月に開催されている「いちょう祭り」というイベントだったそうです。

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「いちょう祭りでブースを借りて、学校のPRをすることになったんです。そこでただチラシを配っているだけより、実際に何か作ってもらった方が楽しいだろうなと(笑)」

初年度に出店したときは、お箸作りのワークショップを、次年度はバターナイフ作りのワークショップを行ったところ、「子どもたちが思いのほか楽しんでくれて、大人向けの木工スクールとはまた違った充実感があった」と伊藤さん。

「最近の子どもたちと話していると、刃物を使う機会ってほとんどないんですね。親だって同じです。だから逆に新鮮というか、刃物を使って工作する楽しさを純粋に楽しんでもらえるようです」

子どもたちに木工を教えることに手ごたえを感じたという伊藤さん。たまたま八王子市の観光課からもイベント出店の声がかかり、市内でワークショップを定期的に開くようになります。

そんな伊藤さんがにっぽんてならい堂のために、バターナイフ作りのワークショップを企画してくださいました。やすりで削ったり、塗装をしたりという簡単な作業なので、おうちの方の助けがあれば、未就学児でも参加できます。

参加された方にはヒノキとウォールナット、2種類の材料をお渡します。親子で1本ずつ作ってもよいですし、親子で協力して1本を作り上げてもOK。もちろん大人だけの参加も可能です。

「バターナイフ1本でも作るのには意外と大変なんだということや、やすりでやすることでどんどん綺麗になっていく面白さを体験してもらいたいです。それと、今回は塗装にくるみを使うので、身近な食べ物が塗装に変化するんだということも子どもたちには驚きになると思います」と伊藤さん。

取材時に完成したバターナイフを見せてもらったところ、肌触りがとてもよく、軽いので、子どもにはとても使いやすいそうだと思いました。使うごとに木の色つやが変化していく楽しみを知れば、ものを大切にする心が自然と芽生えることでしょう。

次回はワークショップの会場となるモノ・モノの歴史についてお伝えします。

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写真・文/宝樹恵(グループモノ・モノ)