【てならい後記】大人も子供も楽しい~夏最後!紙を循環させる漉き返し和紙づくり。
こんにちは。てならい堂スタッフのてんです。少しづつ秋の気配を感じる頃になりましたね。
先日、てならい堂にて紙漉き作家のイ・ヘリム先生をお招きし、「漉き返し」の手法を使った紙漉きワークショップを開催しました。午前・午後ともに、紙漉きや手仕事に興味を持つ皆さまにご参加いただき、それぞれに個性豊かな紙が生まれる一日となりました。

今回行ったのは「漉き返し」という手法。紙や雑誌、チラシなどを細かくちぎり、水に浸して繊維をほぐし、もう一度紙として漉き直していきます。普段は何気なく使っている紙も、水に浸してみると、ふんわりとほどけていくものもあれば、しっかりとちぎらなければ繊維がほぐれないものも。
「同じ紙でも、素材によってこんなに違うんですね」
そんな発見から、今回のワークショップが始まりました。まずは先生の紙のお話を聞きつつ、ワークショップの流れとデモンストレーションを見ます。そもそも紙はどうしてくっつくの?だろうか。そう思ったことはありませんか?紙漉きでは、紙の繊維が水の中で絡み合うことで、一枚の紙になっていきます。
繊維の長さによって絡み方が違うこと、細かくしすぎると繊維が短くなり、紙の強度にも影響すること。
「ミキサーを使えば簡単に細かくできますが、繊維を切りすぎると弱い紙になってしまうんです」
そんな紙の仕組みも、実際に手を動かしながら先生が教えてくださいました。

今回の紙は、葉書として使えるよう、ある程度の厚みとハリを持たせることもポイント。
和紙のように薄く流すのではなく、パルプを加えて繊維をしっかり絡ませ、厚みを作っていきます。紙漉き型の枠の厚みを目安に、2〜3回ほど漉いて繊維を重ねていきます。ただし、最後に水を抜くためにぎゅっと圧縮すると、紙は想像以上に薄くなります。
「仕上がりの厚みを考えて漉く」そんなところにも、紙漉きの奥深さがありました。


ぎゅっと絞ると、ペタっとします。感性の厚みも考えて漉いていきます
最初にパルプをひと掬い。そこへ、細かくちぎったチラシや折り紙などを加えていきます。色紙の色を活かしたい場合は、あえて少し大きめに。細かな色の粒を散らしたい場合は、さらに細かくして。同じ素材でも、ちぎり方ひとつで紙の表情が変わっていきます。先生が用意してくださった色紙のほか、参加者の皆さまも思い思いの素材を持ち寄ってくれました。

主となるパルプ材です。

午前の部では、感光紙を使った写真作品を制作されている方が、制作の過程で生まれた紙をお持ち込み。また、卵のパックをパルプとして活用された方や、ご友人のインコの羽を持参された方も!!。他にも、毛糸や植物の種、先生からお裾分けいただいた羽などを漉き込みながら、それぞれの素材が一枚の紙の中で新しい表情を作っていきます。
糸や羽のように形を残したい素材は、漉く工程の最後の方で。「今くらいで入れてみましょうか」「もう少し繊維を重ねても大丈夫ですよ」先生に漉き具合を見ていただきながら進めていきました。一枚目、二枚目、三枚目と進むにつれて、「今度はチラシのデザインを活かしてみよう」「この色は大きめに残してみよう」と、少しずつ工夫も増えていき楽しそうなお時間。紙の文字や模様をあえて残したり、色の配置を考えたり。同じ素材を使っていても、手を動かす人によってまったく違う紙が出来上がるのが、紙漉きの面白さです。


「失敗しないのも紙漉きの魅力」と先生。紙漉きは、繊維の偏りも、色の混ざり方も、漉き込んだ素材の配置も、その紙だけの表情になります。きれいに整った紙を作ることだけが正解ではありません。
「ここが少し厚くなった」「この色が思ったより残った」そんな偶然も含めて、一枚の紙になる。
だからこそ、初めての方でも楽しみやすく、「失敗しない手仕事」なのかもしれません。
ワークショップの中では、「家でもできますか?」「この素材は漉き込めますか?」「布も入れられますか?」「繊維の長さはどう違うんですか?」など、たくさんの質問が飛び交いました。布のように繊維をほどくのが難しい素材は、家庭で扱うには少し工夫が必要なことや細かく叩いたり、繊維の状態を整えたりする必要があることなど、今後お家でやる場合のアドバイスもくれます。
ただ作るだけでなく、「なぜ紙になるのか」「どうしたら強い紙になるのか」「家ではどんな材料でできるのか」そんなことを知ることで、紙漉きがぐっと身近なものになっていきますね。

捨てるものが、新しい素材になる。
今回の漉き返しは、使い終わった紙をもう一度素材として生まれ変わらせる手仕事でもあります。チラシや雑誌、卵のパックなど、普段なら捨ててしまうものも、水に浸して繊維をほぐせば、また新しい紙になる。「紙は分解すれば、また素材になる。そして最後には土に還ることもできる」と先生。
漉ききれなかった繊維も活用することができ、そこに種を蒔けば、芽が出る紙として楽しむこともできるそうです。今回は植物の種を漉き込む方もいらっしゃり、紙として使ったあと、どんな芽が出てくるのかも楽しみのひとつになりました。
身近な紙が、また別の形に生まれ変わる。紙漉きには、ものを大切に使い切る楽しさもあります。
イ・ヘリム先生のワークショップでは、きれいな作品を作ることだけでなく、自宅でも楽しめる方法や、紙という素材の面白さを伝えてくださいます。少しの工夫で、捨てようと思っていた紙が、手紙を書くための葉書になったり、飾りたくなる一枚になったり。手を動かしながら素材を知り、偶然生まれる表情を楽しむ。
そんな紙漉きの魅力を、たっぷり感じる一日となりました。
ご参加くださった皆さま、そして紙の世界を楽しく教えてくださったイ・ヘリム先生、ありがとうございました。









