こんにちは。てならい堂スタッフのの松本です。

からりとした天気、動くと感じる湿度。服装選びが難しい女性陣の中、行庵先生は真夏の出立ちで登場です。

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第三回目の今日は、前回さび漆を塗った箇所を研いで、その面を均一な状態(平面を出す)にし黒漆で下塗りを行います。

漆を塗り(髹漆:きゅうしつ)、固め、そして研ぐ、その髹漆(きゅうしつ)と加飾の工程を学んでいく過程でとても大切な道具の知識。今日の工程では行庵さんより、研ぐための「やすり」と漆を塗るための「筆」について説明がありました。

蒔絵の世界では「均一な面を作る」ことが大事とされているため、やすりの違いを理解するとこれからの工程でなぜこの順番に作業するのか腑に落ちるはずです!

・凹凸を少なくする役目の「ペーパーやすり」
・出っ張りを研ぎ、真っ直ぐな均一の面にする役目の「クリスタル砥石」
・この2つの良いとこどりの役目をもつ「スポンジやすり」

クリスタル砥石は器物の外側には使いやすいけれど、内側は使いずらいデメリットもあり、「ペーパーやすりで、凸凹をとり、次に扱いやすく均一に研ぎやすいスポンジやすりで真っ直ぐ均一な面を出していく」という作業で進めていきます。

続いて、蒔絵筆と呼ばれる漆を塗る筆について。蒔絵筆は線塗りに適した「ねじ替わり筆と、面塗りに適した「地塗り筆」があります。

右がねじ替わり筆、左が地塗り筆。

右がねじ替わり筆、左が地塗り筆。

教室では簡易版としてねじ替わり筆→「丸筆」、地塗り筆→「平筆」を用意していますが、それぞれ工程に則した筆を使う大切さと、漆の塗り方があるんですよ!

【欠け編】錆漆をやすりで研ぎ、黒漆で欠けとヒビに下塗りをする。

早速教わったやすりを使い、作業をしていきます。

まずは、ペーパーやすりで乾研ぎ。

器の下に必ず手を当てて力の入り方には注意しましょう!

器の下に必ず手を当てて力の入り方には注意しましょう!

次にスポンジやすりで水研ぎ。このスポンジで水研ぎする“研ぎしろを残す”ことを前提に研いでいくと良いそう。水研ぎは研げやすいのでこまめに拭き取りながら確認することをお忘れなく。

研ぎ面がツルッとした綺麗な仕上がりに♪

研ぎ面がツルッとした綺麗な仕上がりに♪

次に、平筆を使って下塗りをしていきます。

実は、塗り方には方向あるんだとか。職人の手仕事はどこまでも繊細です。
・長渡り(ながかわたり) 欠け幅が長く刷毛目が流れていく方向
・短渡り(みじかわたり) 欠け幅の短い方向
真ん中に漆をおとして四方八方のひろげて、斜めに刷毛を通し、次に短渡りに。そして最後に長渡りに刷毛目を通しましょう!仕上げで見えてくるので、基本として覚えておくと良いですね◎

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ヒビには、ねじ替わり筆で線書き。最初は、薄めに塗り、足りなければ漆追加するイメージ。厚すぎると縮むので気をつけます。ヒビに書く漆の線はかまぼこ型になるように意識します。ライトに当てると片面は光り、反対の面は光っていない状態になるそう。

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一方のブローチは下塗りを軽く研ぎ、2度目の漆をさしていきます。

欠け編はここまで。

【割れ編】錆漆をやすりで研ぎ、黒漆で下塗りをする。

欠け編と同様に、まずはペーパーで乾研ぎとスポンジやすりで均一な面を出していきます。

続いて、黒漆の下塗りへ。割れの場合は接着した箇所が線になるので、細い毛先の丸筆(ねじ替わり筆)で細く均一な線を書いていきます。

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割れ編で注意したいことが、漆の線をうっかり触ってしまうこと。。集中して1本1本の線を書いていると、書き終えた線に気づかず触れてしまう方が…!私、何度か目撃してます…。

上級編のお直しに挑戦中のこちらのマグカップ。「こくそ漆」で下地を作った後、白漆で成形し乾いた状態に。ぽてっとしたフォルムがかわいいです!

これから研いで再度白漆を塗っていきます。

これから研いで再度白漆を塗っていきます。

 

そしてブローチはというと、こちらも黒漆の下塗りといよいよ螺鈿に。夜光貝の粒を竹串でちょこんと置いていきます。

螺鈿の下塗りとして黒漆を塗っていきます。

螺鈿の下塗りとして黒漆を塗っていきます。

小さい粒を入れることがポイント。とても初めてとは思えない!と行庵先生も。

小さい粒を入れることがポイント。とても初めてとは思えない!と行庵先生も。

皆さんそれぞれのイメージが個性として現われ、どれも美しいです!

割れ編もここで終了です。

 

行庵先生の道具箱には魅力的な“粉”がたくさんあります。その一部を見せてくれました。

こちらは、とても細かい銀の「平目粉」

こちらは、丸い形状でとても細かい「銀の平目粉」

こちらは、粒の大きな銀の「岩平目粉」違いわかりますか?

こちらは、ゴツゴツした形状で大きな粒の「銀の岩平目粉」。 違いわかりますか?

実際に目で見る夜光貝や銀粉は繊細な輝きでとても美しく、ぜひ教室で皆さんに実物を見ていただきたいです!