これから漆器を使いたいという人に向けて、漆器の使い心地の良さを五感で体験しながら、漆器のお話を聞く体験会を開催します。もちろん今、家で漆器を使っている人も、その良さを改めて見直す機会になると思います。

お酒を持ち寄りながら、つくり手と近い距離感での体験会、これはてならい堂ならでは。

体験してもらうのは、樹木の恵みを食卓に取り入れることで、自然の再生のリズムを意識できるという、会津漆器のブランド「めぐる」の三つ組椀。

“しっかり”と強調しているのは、触りごごち、舌触りの滑らかさなどは、実際に使ってみないと本当の意味では分からないから。”しっかり”と体験してもらうための工夫をご用意してお待ちしています。

会津の自然から生まれ、その自然の時間の流れと共に在る、”めぐる”の漆器。

みんなに知ってほしい「めぐる」の漆器の考え方

日本人なら誰しも漆の器に触れたことはあると思います。

かつては絢爛豪華さの象徴の様に扱われた時代もありますが、そうした時代は過ぎ、「むしろ今の方が漆器の価値は本質的だと思うんです」と教えてくれたのは、漆器ブランド「めぐる」のつくり手・貝沼さんです。

「めぐる」が生まれた福島県会津地方は日本の代表的な漆器産地の一つ。

「安く早く便利に」を突き詰めた道具が私たちの身の回りに溢れる中で、「めぐる」の漆器は、樹木の恵みを食卓に取り入れることで、自然の再生のリズムを意識できる様になるという考えで作られていました。素敵すぎると思いませんか?

この素敵な漆器のことを、つくり手から直接聞いて、その手触り、舌触りを実際に”しっかりと”体験してみる体験会を開催します。

めぐるの三つ組椀。”水平”と”日月”。の2種類。色はそれぞれ4色。

禅の修行に用いられる「応量器(おうりょうき)」にヒントを得たかたちは、収納時には入れ子になり、きれいに重なります。

漆器”めぐる”をしっかりと体験してもらいたいその内容

“しっかり”と体験して欲しいと強調しているのは、やっぱり実際に手に持ってみてそのフィット感や心地よさ、そして口につけた時になめらかさや、汁物を飲むときの飲みやすさなど、どれもこれも実際に使ってみないとその良さは本当の意味で分からないから、なんです。

当日は、「めぐる」のつくり手の貝沼さんをお招きして、漆器「めぐる」ができるまでの過程や、ものづくりの背景について教えていただきます。

そして、漆器を日常使いするにあたっての、魅力や実践的アドバイス、さらには気になるお手入れやお直しについても教えてもらいましょう。

漆器の主役はなんと言っても、漆。貝沼さんたちは今、会津で漆の植林にも取り組まれているそうで、次の世代に漆をつなぐその活動についてもお聞きしたいと思います。

たっぷりとつくり手のお話を聞いた後は、今回のメインは「めぐる」の三つ組椀を実際に使ってみる体験。

“三つ組椀”とは、大中小とサイズの異なる3種類の器「飯椀・汁椀・菜盛り椀」がセットになったもので、この一揃いがあれば一汁一菜が自然に美しく整います。

今回はその魅力を最大に感じてもらうために、実際にご飯と一汁一菜をいただきたいと思います。夕方の会なので、お酒も持ち寄って、グラス片手にワイワイやる体験会にしますよ。

今、まさに漆器を探していたという人も、これから探し始めようという人も、ぜひ、この機会に五感の中でも特に”触覚”で感じながら、ぜひその良さを体感してみてほしいです。

もちろん今、家で漆器を使っている人も、その良さを改めて見直す機会になると思います。

食べる時間をおろそかにしないために、「一汁一菜でよいよね」という提案は、料理研究家の土井善晴さんが提唱されています。

今や希少な日本産の漆掻き。採取後1年寝かされてから使用されます。

器の素地となるトチノキも伐採後、1年ゆっくり乾燥させてから使われるそうです。そんな時間の話をたっぷり聞かせてもらおうと思います。

前年の冬に始まり、とつきとおかの月日を経て完成する器の製作過程を教えてもらいましょう。その時間を楽しむために。

こちらが信玄弁当めぶく。蓋の表面には、ある仕掛けが。その秘密はぜひ実物を見て。

こちらも再び、ダイアローグインザダークのアテンドの人たちと作られた、おいしさを引き立てる匙。

ご飯の時間を大切にして欲しいから

貝沼さんが知り合いから「漆器は最初に何を買ったらいい?」と聞かれることがあり、最初に買う器として間違いのないものをつくりたいと思ったことが、めぐるの開発に取り組むきっかけだそう。

貝沼さんが大切だと思ったのは、“手に持って口につける時の心地よさ”。

そして、その心地よさを通じて、ご飯の時間が大切になる、また、自分を大切にしてるという感覚が器を通じて生まれるということ”。なんだそうです。

持った時、口をつけた時の使い心地、触れ心地。それを細部まで追求するために、「めぐる」の三つ組椀は、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドさんたちの協力のもと、誕生しました。

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、本当に何にも見えない漆黒の暗闇を、普段から目を使わない視覚障害者の方達がアテンドし、視覚以外の感覚を広げて対話を行う、暗闇のソーシャル・エンターテイメントです。

視覚に頼らずに生きているが故に、ものの形や触覚を感じ取る優れた感性を持っているアテンドさんたち。彼女たちのアドバイスの元、腕利きの会津­の職人さんたちとも対話を繰り返しながら、1年間に渡る試作と改良を経て「めぐる」は生まれました。

日常を視覚に頼って生きてると、なかなか得られない感覚ですが、ぜひそんな背景を意識して、今回のワークショップでは触覚を拡張して体験してみたいですね。 

感覚を研ぎ澄ましましょう。それは意識をすれば、誰にでもできることでもあります。

漆器の本質をつないでいく

「めぐる」を職人さんと共に開発した漆とロックの貝沼さんは、会津でのサラリーマン生活の間に、地場産業に関わる機会があって、そこから自然と工芸、中でも漆器の魅力にはまっていき、やがて会社を興すに至りました。

特に震災後生き方を考え直す中で、自然の恵みを育てて器にしていく、自然再生のリズムと人が生きるリズムが合致しているところが面白いな、と思ったそうです。

安く速く便利な世の中、「価値」の時間単位が短くなっていく中で、漆器は、ちゃんと「価値」の時間単位を引き伸ばし、思い出させてくれる存在だと、貝沼さんはいいます。

ちゃんと自然の素材を使って器を使うことで、素材を育てることにもつながるんだという貝沼さんは、現在、漆の植林の活動もしており、漆を育てることも通して「いのちを育てて器になるという面白さ」を漆器に感じているそうです。

こうしたことこそが、漆器の本質であり、それを仕組みにしていきながら誕生したのが「めぐる」の漆器なんですね。今現在も進行形で育てられているその想いに、てならい堂も一緒につながりたいと思っています。

漆とロック代表の貝沼さん。そう、貝沼さんの会社の名前は漆とロック。この活動を見れば明らか。間違いなく、ロックの人です。

漆器を使っている人も、これから使いたい人も、まずはしっかりと体験してほしい

私たち日本人が大切にしてきた、自然と共に暮らす考え方の詰まった”漆の器”と”漆”そのものの魅力。そしてその”漆”への深い洞察と熱い想いが詰まってる「めぐる」。

その漆器の温もりはあたたかく、ごはんも美味しくもなる。まずは、実際に漆器の良さを体感して欲しいなと思います。

実際に欲しいなと思った方は、ワークショップ当日はもちろんのこと、神楽坂ストアにて【5/16(金)~6/1(日)】の期間中、展示受注会もやってますので、どうぞ足を運んでくださいね。じっくり手に取って選べるチャンスですよ。

みなさんの生活に寄り添う漆器との出会いの場になりますように。

うるしを繋いでいく話を、みんなに聞いてほしい。